コーチングの技術、「質問」について学ぶ(その3)
実は先日、自分がとんでもない間違いを犯していたことに
気づいて軽いショックを受けました。
私はコーチや研修講師の立場から、よく「無意識」の力に
ついて話をすることがあります。それは、無意識には「主語」と
「時制」という2つの概念が無い、ということ。
主語を理解していないので、他人の悪口や批判をしていると、
最後は自分へ向けて刷り込まれてしまう、と。
そして、「時制」がわからないので、「やります」という未来形で
語るよりも「出来た」「やった」という完了形で話すことを
心掛けると、成功への行動に繋がりやすい、と。
「主語~」のくだりはネガティブなことばかり口にしていると、
それは自分に跳ね返ってきますよ、という戒めなのです。
ところが、私には「いやぁ、身体が固いからねぇ」という口癖が
あったのですね。
知らず知らずのうちに使っていたことに気づいてこの口癖は
早速止めたので過去形にしましたが、つい先日まで、長年の間、
スポーツトレーナーや、水泳のコーチや、自転車のフィッターや、
整体師や、私の身体の面倒を見てくれる人たちとの会話で必ず
「とにかく身体が固くてねぇ」と言い続けていたんです。
これを指摘してくれたのは、あるトレーナーさんなのですが、
「自分の身体が固い固いと言い続けるのは、柔らかくなる
妨げになりませんか?」と。
ホントですよね! 身体だって言葉に反応すると信じてます。
そう簡単に柔軟性は得られないものの、
「自分の身体は固い」と言い続けることに、何の益があるでしょう。
医者の不養生というか、、、こんなことに気づかずに
自分の身体の特性を知ってもらおうと、安易に口癖に
していたことを大いに反省した次第です。
皆さんもネガティブな口癖が無いか、チェックしましょう。
さて今回も、コーチングの技術のひとつである
「質問」がテーマです。
その第3回目で、具体的な質問の仕方についてご紹介していきましょう。
~~ オープン・クエスチョンと、クローズド・クエスチョン ~~
質問には、大きく分けて、
オープン・クエスチョン(開かれた質問)と
クローズド・クエスチョン(閉じた質問)の2種類があります。
既にご存知の方も少なくないでしょう。
クローズド・クエスチョンは、YesかNoかを求めるもので、
返ってくる答えは極めて単純で、応答も早いです。
一方、オープン・クエスチョンは、
5W1H(What, Why, who, When, Where, How)の
疑問詞を使って、相手の自由な回答を促すもので、
多かれ少なかれ、相手の思考のための時間を要します。
以下の例をご覧頂ければすぐご理解頂けると思います。
クローズド・クエスチョンの例:
- 「報告書の提出期限は守られていますか?」
- 「プロジェクトのスケジュールを前倒しにできますか?」
- 「自分自身の成長のために、考える時間をとっていますか?」
以上の質問に対する答えはいずれも、『はい』 か 『いいえ』で
済みます。
オープン・クエスチョンの例:
- 「報告書の期限を守らせるために、どんな指示を出していますか?」
- 「プロジェクトの進行を前倒しにするために、
どんな方策が考えられますか?」 - 「自分自身を成長させるために、今できることは何ですか?」
以上の質問には、考えて、説明するという脳の働きが求められます。
クローズド・クエスチョンは、事実や状況を明らかにするときや、
早く答えを求めたい時に有効です。
例えば、
私はこう理解したけど、正しい?
明日のイベントに参加できるか否か?YesかNoかだけで答えて。
などです。
しかし、クローズド・クエスチョンは答えの選択肢がYes/Noの2つ
しかないために、相手の思考に広がりが生まれません。
そして質問者側の、期待、仮説などが入っているように聞こえる場合が
あります。
例えば、
「もう出来ましたか?」 ⇒ 早くして欲しい、と急かしている。
「上司に報告しましたか?」 ⇒ していないのでは?と疑っている。
という様に、質問者の意図とは異なる印象をあたえることも
あるので、注意が必要です。
オープン・クエスチョンは、相手にじっくり考えて欲しい、話して欲しい
時に有効です。
相手は答えを出すために考えるプロセスの中で、気づいていなかったことに
気づいたり、理解を深めたり、新たな発見をすることがあります。
オープン・クエスチョンの注意点としては、答える内容は相手次第なので、
予想以上に長い話になる可能性があることです。
こちらが良い質問(相手の視野を広げるような)をしたとして、
それに対して相手の答えが説明的で長くなった場合に、
「話の途中で失礼。これから来客があるので、続きはその後で」
などと水を差してしまったら対話も台無しです。
以上が、オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンの特徴ですが、
私達の日常を振り返ると、おそらくクローズド・クエスチョンの方が
多く使用されていると思います。
理由としては、私達が長年教育されてきた
「正しい答えを見つける」という心の要求に無意識に従っているため。
また仕事においては、「確認したい」「安心したい」という欲求が
常にあるからです。
この確認の欲求はマネジメントの立場から言えば「義務感」という
認識かもしれません。
「やったの?」「終わったの?」「出来たの?」「出来なかったの?」
と・・・
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンは、良し悪しで比較される
ものではなく、それぞれの効果を上手く組み合わせて質問を
進めることが重要です。
コーチングセッションでは、クライアントさんの思考の枠を広げる
ために、オープン・クエスチョンで考えてもらい、いざ行動が決まったら、
「それはすぐに始められそうですか?」「やってみると約束できますか?」
と、クローズド・クエスチョンで行動へのコミットメントを促します。
コーチングセッションは相手の自発性を促すコミュニケーションですので、
こうした両方のクエスチョンのバランスをとって進めるわけです。
~~ 発見・拡大の疑問詞の効果 ~~
オープン・クエスチョンが、5W1Hで構成されると
お話しましたが、Which、Whomを入れて
7Wと称する人もいますね。
いずれにしても、これら疑問詞もそれぞれに
効果的な使い方があるので、覚えておきましょう。
以下の質問は、限定質問と呼ばれるものです。
- who(だれが)?
- where(どこで)?
- when(いつ)?
- whom(だれに)?
- which(どっち)?
これらは、アクションプランの質問とも言われ、
- 期限、納期
- 協力者、資源
- ブレイクダウン(粒度)
- 具体性
- 可能性
について対話が進みます。
コーチングの目的は、ゴールに向けて行動を
支援することですから、これらの疑問詞で、
行動計画を明らかにすることができます。
一方、以下の質問は拡大質問と呼ばれています。
- what(なに)?
- why(なぜ)?
- how(どのように)?
発見・拡大の質問とも言われ、
- 問題・課題の発見
- 解決策の発見
- 可能性の発見
- 価値の発見
- 選択肢を広げる
- 理由・原因の発見
- ブレイクスルーを見出す
などの効果がある、パワフルなオープン・クエスチョンです。
この中でも、私はコーチングセッションで
なぜ(Why?)を使うことが多いです。
Why?の質問は、クライアントさんの
価値観、過去の経験、視点、思い込み、などを
開示してくれるきっかけになることがあるからです。
- 「あなたにとって何故〇〇は大切なのですか?」
- 「何故、その様な優先順位をつけたのですか?」
- 「何故あなたは今の仕事をしているのですか?」
- 「何故、〇〇は難しいとお考えですか?」
などです。
なぜ?の問いかけは語感としてもインパクトがあるので、
One on Oneミーティングなどで、これを使う時は
注意が必要です。
- 「何故、そんなことをしたのですか?」
- 「何故、やらないんですか?」
- 「何故、できないんですか?」
は、質問ではなく詰問として相手を追い込む結果になります。
この表現で「何故?」を突き付けられた方は、
その場から逃げたいという心理しか働かず、思考停止に陥り、
何も生み出されません。
コーチングの言葉を使うとしたら、それぞれ
- 「そのことをした、あなたの考えについて聞かせてもらえますか?」
- 「あなたが行動に移ることを妨げているものは何だと思いますか?」
- 「できなかった要因を3つ挙げるとしたら何ですか?
それに対してどの様な対策が考えられますか?」
という問いかけになると思います。
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを効果的に
使い分け、その表現方法や語彙を事前に考えておく。
これは、手間のかかることですが、相手との対話を質問に
よって生産的なものにしようとするなら、とても大切なことです。
次回も「質問」をテーマにお話を続けたいと思います。
今日のお話はここまでです。
最後までお読み頂きありがとうございます。