適応指導や方針説明ではない。「オリエンテーション」の目的とは?

私事ですが、
9月4日(日)佐渡国際トライアスロンのBタイプ(131.1km)に
参加し、ヘロヘロになりながらも無事完走してきました。

この大会への初参加はコロナ禍前の2019年で、
フィニッシュまで9時間半に及ぶ悪戦苦闘でした。
翌年のリベンジを誓ったのですが、20年21年と大会は中止となり、
3年ぶりの挑戦で、なんとか9時間は切ることができました。
Aタイプ(236.2km)を疾走する鉄人の方々に刺激は受けましたが、
流石にこの距離に挑もうとは思いません。

コロナ禍にもかかわらず、楽しい思い出を作って頂いた、
大会関係者や地元の方々に感謝の気持ちで一杯です。

さて今日は、前回のP/PCバランスのお話の流れから、
オリエンテーションについて触れてみたいと思います。

~~ オリエンテーションとは? ~~

この言葉を聞いたことのある方、また実際にオリエンテーションを受けた
経験のある方は多いと思います。

語源は、教会を建てる時に祭壇を東に向ける様に設計することを
オリエンテーションと呼んだそうで、東を正しい祈りの方角としたことから、
方向付けを意味する言葉となったそうです。
辞書には(環境などへの)適応(指導)、順応、とも記されています

ですので、新入生、新入社員、新入部員などが新しい組織に入る時に、
に行われる説明会を称することが多いですね。

ちなみに、最近は混同する人は少ないと思いますが、
「オリエンテーリング」という言葉もありますが、こちらは
野山の中を地図上に表示された目印の地点をたどり、
ゴールまでのタイムを競うスポーツです。

「明日新入社員のオリエンテーリングがあるぞ」と
誤用があれば、「では、地図とコンパスが要りますね」と
ツッコメます。(嫌われると思いますが・・・(笑))

さて、新入社員対象を例にとると、一般的な
オリエンテーションの中身は次の様なものではないでしょうか?

会社の概要(歴史、規模、支店・工場などの所在地、
製品群、主要なお客様、ビジネストレンド、等)に続いて、
各部門の紹介と役割、職種、職務規定、労務規定、
キャリアパス、福利厚生、各種支援、社内イベント(歳時記)
などが紹介され、
さらに、その会社の一員として活躍してもらうための、より詳細な
事柄の習得を、新入社員研修 ⇒ OJT へと渡していく。

この様な形ではないでしょうか?

~~ コーチングにおけるオリエンテーション ~~

多くの企業や組織で行われているオリエンテーションは、
上述の様に「説明会」的な意味合いが強いと思いますが、
コーチングの観点では、次の様に考えています。

「人との間に新たな関係性が生み出される時に、
その関係性がその先、良く保たれていくために行う準備」
です

コーチングのプロセスでは、コーチとクライアントでオリエンテーションを
行うステップがありますが、良質な関係性を築くことが不可欠な
コーチングおいては、オリエンテーションは大変重要です。

オリエンテーションはコーチングを開始する前に行われ、
良い関係性を保つために、お互いの権利、責任、義務、相互支援、
求められるもの、ルール、ビジョン、等について明らかにし、
「確認をとって合意を得る」というプロセスになります。

この相互に合意する、ということが良質な関係性を築く上で
とても大切なのです。良質な関係性とは、
「緩く、甘く、なぁなぁ」の上に成り立つものではありません。

会社の新入社員オリエンテーションも、同様の意図はあると思います。
その会社で働くにあたってのルール、義務、責任、権利、賞罰、
などが就労規則に織り込まれていますし、合意については採用通知や
誓約書などを以て形成されたものと見なすことができます。

しかし、会社においても、部署、チーム、現場という小さな組織単位と
なると、確認と合意を得るオリエンテーションの意図は薄れてくるようです。

~~ P/PCについて合意を得る機会 ~~

「オリエンテーション」は、新しい関係性を築き、それを良い状態に
保つための、準備であること。
そして、上司/リーダーとメンバーの双方の考え、権利/義務、など
諸々について確認し、合意を形成する場であること、とご説明しました。

以前のブログで、P(成果目標)、PC(成長目標)について
上司/リーダーの考えをチームに共有することが大切であるという
お話をいたしましたが、ひとつの方法として「オリエンテーション」が
有効であることがご理解頂けるかと思います。

上司やリーダーの考え方が理解できないまま、
P(=成果目標)に向けて尻を叩かれ、チームの中で自分は
どの様なPC(=成長目標)を果たせばよいのか?が、不明瞭になり、
モチベーション低下、不信感、不満、を生じる結果となりかねません。

PとPCについて共有し、合意を得るとは、例えば・・・

「うちのチームの目標は〇〇(P)だ」
「そのために全力を尽くしてもらうが、メンバーにとって大切な△△(PC)
についても忘れない。このバランスをとるのは私の責任である。」
「但し、年度末の繁忙期ピークの2週間はPが最優先になることもある。」
「メンバーに過剰な負担がかからないよう、リーダーとして調整に努めるが、
業界全体の構造上、コントロール出来ないこともあるので、理解して欲しい。」

という具合ですね・・・
こういう話をするのが、オリエンテーションの場なのです。

~~ 確認と合意はより上位概念に及ぶ ~~

多くのマネジメントや職場リーダーの方々のお話を伺うと、
新入社員、中途採用、異動によって、チームに加わったメンバーに、
ここまでお話した様な意図で「オリエンテーション」を行っているという
ケースは稀です。

典型的なのは、
「ようこそ!」「よろしく頼むよ」「期待してるよ」
「わからないことは〇〇さんをメンターに指名したから、
何でも訊いてね。もちろん私に訊いてもいいよ」
「月に一度、私とのOne On Oneミーティングやるよ」
「うちのチームは原則残業禁止ね」
「外出先はホワイトボードに書いといて」
「月一で飲み会やってるから、よかったら参加して」
「あとは実際に仕事始めてみて、
不明な点はその都度教えていくから。ヨロシク!」
という感じ・・・。

チーム内の「タスク(作業)」を上手く回すための、指示や、
質問に応えるところまでは行きますが、その上位概念である、
「仕事」とは何なのか?「責任」とは何なのか?に基づく信頼関係の
構築や、役割を明確にして合意することが省かれがちです。

そこで、ひとつ上の視点で、お互いの役割や考え方を明確にして
合意形成することが、「オリエンテーション」によって良いチームを
作るポイントとなります。

例として、コーチング型マネジメントで実践されている
「オリエンテーション」では、上司/リーダーがメンバーに対して
どの様な問いかけをしているか?以下に事例を示します。
One On Oneミーティングで行われている例で、
多くのモデル質問の中から何点か抜粋します。

  • あなたが仕事をする上で、大切にしていることはどんなこと?
  • あなたの強みはなんだと思う?
  • あなたが得意とする知識・スキル・資質・特性はなんですか?
  • あなたにとって、今もっとも気がかりなことはなんですか?
  • あなたがこの1年間で、取り組みたいテーマはなんですか?
  • あなたが仕事をする上で、お金以外に動機になることはなに?
  • このチームにおいて、私(上司)の役割【責任】はなんだと思います?
  • では、このチームにおいて、あなたの役割【責任】はなんだと思います?
  • あなたが、職務としてやるべきこと(仕事)はなんですか?
  • お互いに守らなければならないルールはなんだと思う?
  • あなたが私(上司)に期待していることはなに?
  • 私は、あなたの成長の為にどんな支援をしたらいい?
  • ところで、あなたは私(上司)にどれくらい正直に話せている?
  • これから一緒にやっていくのに、心配なことはない?
  • ここまでで不明な点はないですか?
  • これから、チームの目的の為に、あなたの成長の為に最善を尽くすと約束してくれる?

等々・・・・

最後の質問「~最善を尽くすと約束してくれる?」に「はい」の応答を得ることが、
「合意」になります。
また、「お互いに守らなければならないルール」については、別紙に具体的にリストアップし、
その遵守についても、「守ってくれるか?」 ⇒ 「はい」で、合意形成をします。
実際は「はい」にならない外もあります。
例えば、ルールのリストに「出社時刻は守る」とあっても、
「すみません。毎週水曜日は家内の仕事の理由で、私が子供を保育園に
送ってから出社するので、一時間遅れます」とか。 
これもオープンに相談し、合意を得ればよい話ですね。

上記の質問している上司と、応答しているメンバーの会話をイメージすると、
良い関係性を築き、進めていくための場になっている感じがしませんか?

~~ リ・オリエンテーションの奨め ~~

とはいえ既に、何気ない形での、自分流の、オリエンテーションを
済ませてしまっている上司/リーダーにとって、新たに加わるメンバーなら
ともかく、既存のメンバーに今更こんな形の改まったOne On Oneは
出来ないと考えるかもしれません。

でも、大丈夫です。
コーチングのプロセスに、リ・オリエンテーション(再オリエンテーション)という
ものがあります。
オリエンテーションを済ませて、コーチングを進めてきたが、一旦歩を止めて、
ゴールの再確認をしたり、コミュニケーション方法を見直してみたり、
コーチング・セッションの有効性を振り返ってみたりするのです。

仕事の場でも同様に、
チームのゴールをメンバー全員で再度確認するため。
チームメンバーの価値観を知るため。
役割と責任の適正チェックのため。
作業負担の適正化のため。
自分(上司)のコミュニケーション方法を良化するため。
より効果的なチーム運営のため。
より活気のある楽しい仕事環境にするため。
等々・・・・

理由は何でもよいではありませんか。
堂々を宣言して、リ・オリエンテーションをしてみてはいかがでしょう。

チームをより良い方向へ導くために、
様々な手を打つリーダーの姿は、
メンバーにとって頼もしく映るはずです。

今日のお話はここまでです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門

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