スポーツ指導における「傾聴」を考える(2)
今週大きな関心を寄せたニュースは、
行方不明になったタイタニック潜水艇です。
捜査中の様々な憶測や、予見されたリスク、
万一の死亡事故が免責事項になっている現実、
主催側の責任、等々、
多方面からのメディアのコメントは興味深いものですが、
何よりも「助かって欲しい」という気持ちは万人共通だと
思います。
自分の命を賭しても、未知の領域に足を踏み入れたい、
体験をしたい、という欲求は霊長類たる人間だけが
持つ欲求なのでしょう。
どういう形でこの欲求を満たすか? 満たそうとしたか?
には賛否両論あると思いますが、この欲求自体を
批判したり、否定することは出来ないだろうなぁ、
というのが正直な思いです。
さて、今日のテーマは引き続き「傾聴」。
スポーツ指導に使える3つの主要コーチング技術、
「質問」「承認」「傾聴」の締めくくりです。
~~ 傾聴が必要になるとき ~~
前回は、1on1ミーティングに不可欠なものとして、
「傾聴」のお話をしましたが、
1on1ミーティングありき、というよりも
「傾聴」によって相手の話や考えを真剣に聴こう
とすれば、多くの場合は1on1ミーティングの形に
なると思います。
もちろん、チームのミーティングなどで、複数の中から
挙手をして意見を発表するケースもありますが、
「傾聴」の基本的な考え方は同じです。
ここでは、1on1ミーティングの形から「傾聴」の
技術についてお話を進めていきます。
選手や生徒を観察していて、
「最近どうも調子が悪そうだ」
「集中力が落ちている様に見える」
「何か心配事でもあるのだろうか?」
などを感じたら、
「ちょっと、話を聞かせてくれないか」
と持ちかけますよね。
1on1ミーティングが普段から行われている
チームであれば、
「練習の前に15分くらい、1on1やらないか?」
となります。
話を聴くのが目的ですから、相手の話を
促すことが第一歩ですが、
オープンクエスチョン(Yes、Noだけで答えられない質問)や、
フィードバックが呼び水になります。
例えば、
「今度の試合に向けての練習計画について、
キャプテンとしての考えを聴きたい。」とか、
「先週から少しエネルギーレベルが下がっているように
私からは見えるのだけど、実際どうなんだろう?
何か理由があれば聴かせてくれるかな?」
などなど。
さて、ここから「傾聴」がスタートします。
~~ 傾聴に大切な3つのこと ~~
傾聴のスキルについて全てを網羅することは
メルマガの紙面では出来ませんが、
大切な3つのポイントについてお話したいと思います。
正しく「傾聴」を行うために、スポーツ指導の立場だけでなく、
ビジネスマネジャーにとっても留意点になると思います。
ポイント1.安心・安全の場を作る
先週の1on1ミーティングのくだりで、
行う場所は出来る限り解放感があるところが
望ましいと述べました。
また、効果的な面談を行うノウハウとして、
座っている場合は、対面角度は真正面から(180°)でなく、
机を挟んでいれば、斜めの位置に、椅子だけであれば
120°~90°くらいが良い、など様々に紹介されていますが、
要するに相手が安心して話せる環境、聞き手の態度を
作るということです。
姿勢・態度については、
聞き手が椅子に浅くかけて上体を軽く前傾し、
話し手への興味を示す姿勢を表すことは大切です。
また、やってはいけない態度として、
腕組み、足組み、ふんぞり返り、などの威圧的態度、
険しい表情、よそ見、スマホいじり、貧乏ゆすり、
机を指でコツコツ叩く、などが挙げられます。
こうした非言語的コミュニケーションに注意を払うことが
安心・安全の場をつくることに役立ちます。
ポイント2.ちゃんと聴いていることを伝える
- 相づちを打つ
⇒ なるほど、そうなんだ、へぇ、意外だね、そりゃ大変だったね、等々。
また、言葉を発しなくとも、非言語的コミュニケーションとして
大きくうなずくことも大切です。 - 相手の言ったことを繰り返す。
⇒「今日は疲れてしまって」に対し、
「今日はつかれちゃったんだね」
「それに対してモヤモヤしたんです」に対して
「そうかぁ、もやもやしたんだ」、と。
- 相手の言ったことをまとめる。別の表現にしてみる。
⇒「そうかぁ、要するにこういうことが心に浮かんだんだね」
「つまり、○○ということなのかな」
「今の話を〇〇という様に理解したのだけど正しい?」 - 質問をする
⇒「今の話をもう少し詳しく話してくれる?」
「なるほどぉ、それでどの様に感じたの?」
いずれも、相手の話題に興味、関心を示す対応であって、
コミュニケーション技術のひとつですから、意識することで
応答することができます。
そうした応答に、「わざとらしさ」を感じて、初めは抵抗感を
持たれるかもしれませんが、
聴く側の習慣としていくうちに、意識的に為された応対が
自然な応対に変化してきます。気持ちもこもってきます。
ですから、先ずは相手の話に対して上述の様な応答を
基本動作にしていくことが大切です。
ポイント3.「聴く構え」で聴く
これが一番大切であり、
おそらく一番難しいことかもしれません。
聴く構え(=心の準備)とは、以下の様なことです。
先入観を捨てる「見たいように見て、聴きたいように聴く」
というのが人の常です。
つまり、話を聴く前から、脳は取り入れる情報を
決めているのですね。
聴いている「事実」よりも、脳は自分の「解釈」を優先します。
そして、その「解釈」は自分の経験や価値観から
大きな影響を受けています。
例えば、
「最近、上級生の指示に従わない1年生がいて困る」
という話を聴いた時に、
上級生に指示に従わない1年生像が頭に浮かび、
それを厳しく指導する上級生の「あるべき姿」がイメージされます。
指導力が足りないことが原因では、と「解釈」します。
そして先輩としての指導力を発揮させるために
どの様なアドバイスを与えようか?と相手が話している
最中にもかかわらず、自分が次に述べるセリフを考え始めます。
あるいは、自分にも同じような経験があれば、
「後輩指導アルアル」として、自分の経験からアドバイスを
与えようとするかもしれません。
話されている内容や、相手へのコメント、評価、
判断、アドバイス、時には批判までが頭に浮かびます。
この時点で既に「傾聴」は放棄されていると言えるでしょう。
姿勢、態度は「聴いている」なのですが、脳は勝手な解釈を
元に次の自分の発言を考えている、ということです。
さて、脳を正しい「傾聴」の方へ導くには
どうしたらよいでしょう?
有効な方法の一つが
「共感する」ことであると言われています。
「同感」ではありません。「共感」です。
「同感」は多かれ少なかれ聞き手側の考えや
価値観に照らし合わせて湧き上がる感情ですが、
「共感」は、真っ先に相手の感情、相手の想い、
相手の視点から、話されていることに向き合う
ことです。
「そうかぁ、1年生に手を焼いているんだな」
「どんな状況で困っているんだろ?」
「この子は1年生をどう見ているんだろう?」
「1年生にどうあって欲しいのだろう?」
「どんな気持ちで自分にこの話をしているんだろ?」
「今、この子が見ている景色はどんなだろう?」
等々・・・・
相手の立場、考え、視点、期待、感情を
全てくみ取っての心の構えが「共感」です。
端的に言えば、「親身になって聴く」ということでしょう。
これが疎かになると、話を聴いた後で
相手にアドバイスを与えるにしても、
考えさせるための質問をするにしても、
その内容が、その場しのぎ、表層的、的外れ、
自己満足なものになっていく可能性が大きいのです。
共感をもって「聴く構え」を作ることは、一朝一夕に
できることではないと思いますが、自分の解釈や
先入観を排除して話の本質に耳を傾けることを
ゴールにして、意識的に取り組んでいくことが
大切です。
以上が「傾聴」のための大切な3つのポイントです。
~~ 傾聴の先にあるもの ~~
では、正しい傾聴が出来たとして、その先にあるものは
何でしょう?
「傾聴」は相手を理解するための「手段」ですから
その「目的」は、後に続く、アドバイス、コーチング、
教え、コンサルティング、カウンセリング、などの
対人支援のコミュニケーションの質を上げることにあります。
相手の話の本質を理解しているか否か?
自分のバイアスが相手の話を歪めているか否か?
によって、相手を支援する、相手の役に立つ、
言葉がけの内容が大きく変わると思います。
以上、長くなりましたが、「傾聴」についての
お話です。
さて、7週にわたって、「質問」「承認」「傾聴」の
コーチング技術をスポーツ指導の世界で活用することを
ご紹介してまいりました。
目的は、
選手・生徒との関係性が良くすること、
選手の主体性を育むこと、
個人やチームのパフォーマンスを向上させること、
に他なりません。
しかし、ブログ紙面でご紹介できることは
限られていますので、スポーツ指導における
コーチングについてご興味があれば、
是非、お声がけください。
個々の状況に合わせて、より広くより深い、
コーチング技術をご紹介できると信じております。
今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。