佐々木朗稀投手の登板回避問題と四半期開示義務廃止の共通テーマ

千葉ロッテマリーンズ、佐々木朗稀投手の完全試合、
素晴らしかったですね~。
13者連続を含む19三振も信じられない偉業です。

そして、今日(4月14日付)の日本経済新聞の金融経済面には
「四半期開示、短信に一本化」の見出しです。
決算報告書類の四半期毎の報告義務を廃止する方針が
政府から打ち出されたと・・・

今週は、この2つのニュースに共通して関連する、
P/PCバランスのお話です。

~~ P/PCバランスとは? ~~

Pとは、Production(成果)
PCとは、Production Capability(能力)を意味し、
スティーブン・コヴィ博士の名著「7つの習慣」に由来します。

全世界3,000万部、日本でも累計200万部を売り上げている
(2018年現在)ベストセラーなので、既にお読みになっている方も
多いと思います。

コヴィ博士は著書で、7つの習慣は「効果性を高めるための習慣」
とした上で、その理由は「この習慣が自然の法則にしたがった効果性の
パラダイムに基づいているからでもある。私はこれを
『P/PCバランス』と呼んでいるが、多くの人が自然の法則に反して
行動しているのではないだろうか。」、と説いています。

この文だけだと少々分かりにくいのですが、続くイソップの寓話
「ガチョウと黄金の卵」を引合いにした説明で理解できました。

多くの方がご存知だと思いますが、こんなお話です。
ある農夫が飼っているガチョウが突然、毎日1個、
金の卵を産み始める。
それによって大金持ちになった農夫だが、さらに欲が出て、
「ガチョウの腹にはさぞかし大量の金があるのだろう」と思い、
ガチョウの腹を裂いてしまう。
しかし、ガチョウの腹に金は無く、ガチョウも死んでしまい、
それ以来農夫は金の卵を得られなくなる。

この寓話から、P(Production:成果)を黄金の卵、
その成果を生出すための資産、能力すなわち
PC(Production Capability:能力)をガチョウに例え、
本当の「効果性」はこの二つの要素で成り立っていると説きます。

成果(黄金の卵)ばかりに目が行き、能力(ガチョウ)を無視すれば、
金持ち生活は破綻するし、反対にガチョウの世話ばかりして、
黄金の卵の価値に眼を向けなければ貧乏生活が続くだけ。

コヴィ博士は
「このPとPCのバランスがとれて始めて「効果的」なのであり、
このバランスをP/PCバランスと名付けている。」

と結んでいます。

著書ではさらに物質面、金銭面、人的資産/子供の教育などについて、
例を挙げてこの「P/PCバランス」の大切さが説かれています。

ちなみに、私が認定コーチとして所属している
(一社)日本スポーツコーチング協会では、
研修やコーチングの場で、スポーツ指導者の方々にこの
「P/PCバランス」のお話をご紹介し、ディスカッションをする
機会が多いのです。

この場合のPは正にスポーツの成果。記録、順位、勝敗で、
PCは選手や学生、生徒の能力です。

成果(P)を求めるあまりに、能力(PC)への考えが不足していませんか?
P/PCバランスを保つために、どの様な指導を心がけていますか?
仮にPが達成できなかったとしても、それを目指すことによって得られたPCは
何ですか?それに着目していますか? 

等々の問いかけで始まるディスカッションです。
とても興味深いお話が伺えます。

さて、ここで冒頭の佐々木朗稀投手のお話です。

~~ 佐々木投手の登板回避問題から考えるP/PCバランス ~~

ご存知の方も少なくないと思いますが、佐々木投手の高校生時代に
県大会決勝戦での登板回避をめぐる賛否両論がニュースを賑わせました。

《以下、Wikipediaより》
2019年7月30日に行われた第101回全国高校野球選手権
岩手大会決勝戦において、佐々木は登板することなくチームも
花巻東高校に2-12で敗れ、大船渡高校はあと一歩のところで
35年ぶりの甲子園出場を逃した。

これに対して大船渡高校には2日間で250件の苦情が殺到し、
佐々木のその起用法を巡っては野球関係者や評論家の間でも
賛否両論が巻き起こり、メディアでも多数取り上げられることとなった。」
《Wikipedia 以上》

社会的な賛否両論を巻き起こす例は稀だと思いますが、

  • 連勝を重ねる少年サッカーチームは、優秀な
    ストライカーにボール集めることで成果を上げることが
    できるが、少年の膝を壊してしまう危険。
  • 同様に、エースの連投を頼みにする小中学、高校野球の
    投手の肘への負担増。
  • セレクション(先発選手の選定、駅伝のメンバー選定、など)の
    時期に故障の報告を躊躇する選手。

などは、身近なスポーツの世界でも「成果」を求めるところに
付き物のテーマです。

大船渡高校の國保陽平監督は、甲子園出場という「成果」より、
佐々木投手がこれからも伸ばしていかなくてはならない「能力」を
重視したということでしょう。

スポーツ界でのP/PCバランスのとり方は、
「成果のみを重視することで能力を酷使することをしない。」
というケースが多いと思います。

では、ビジネスにおいてはどうでしょう?

~~ ビジネスにおけるP/PCバランス ~~

冒頭にあげた、四半期開示義務の撤廃の政府方針も
未だ賛否両論はあるにせよ、「企業の負担減」という理由の他に

「企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長している
との懸念がある」 
とし、中長期的な企業価値向上を目指す
流れに適合していない。
との主張もあります。

四半期開示義務だけの理由ではないでしょうが、
いわゆる「成果主義」が旗頭となって、企業が持っている能力や
資産が棄損されたり、歪められたりするケースは少なくありません。

その抑止力となるコンプライアンスの網目もかい潜っての粉飾、
虚偽報告、虚偽記載、などは論外ですが、身近な例でも、

会社の面子を賭けてリスクの高いプロジェクトを引き受ける。
今期の目標売上げ達成を第一とし、採算度外視の商談を受注する。
優秀な人材を先取りするために、就職協定を無視した活動をする。
等々。

私自身、
「このプロジェクト、何人倒れるかわからんぞ」と言いながらも
「やるっきゃない!」の旗振りをする事業部トップや
プロジェクトマネージャーを何人も見てきました。

こうした成果主義は、結果として
PCとなる能力や資産(お客様、人材、信用、収益、など)
を傷つけ、失わせるリスクがあります。

こうして、ビジネスにおいても
P/PCバランスが重要になってくるわけです。

~~ P/PCバランスを保つために ~~

以上、スポーツとビジネスを例に上げましたが、これ以外にも
人生のあらゆる場面で、PとPCに対峙する機会は多いでしょう。

常に自分が、黄金を求めてガチョウの腹を引き裂いているような行動に
出ていないか? 
「成果」をもたらしている「能力」へも意識を向けることが重要です。

これは「バランス」の問題です。

違法行為は別としても、現実的には、
ある時はP側に、ある時はPC側に天秤が傾くことは避けられないでしょう。

大切なのは、

  • P/PCのバランスに気付ける眼をもっていること、
  • そしてこのバランスが崩れそうだと思ったら、あらゆる対応策を考えること

だと思います。

佐々木投手のケースでは、反対コメントを発した側の理論は、
決勝戦から逆算して県大会全体を通じて投手をやりくりすればよかった。
限界を超えるという体験をさせることも教育だ。
などでした。

逆算しての投手やりくりには、対応策として一理あります。

限界を超える体験とはどこまでなのか判断に難しいところですが、
「試合に出たい、投げたい気持ちはありました。」と後のインタビューで
語った佐々木投手の心情を思えば、先発から3回までとか、限定的に
マウンドを踏ませる手はあったかもしれません。

ビジネスの場でも、
心身の疲労が極限に達しない様なプロジェクト運営と就労環境の整備。
大きな値引きがその後の商談に影響を与えないような交渉。

など、絞り出せるアイデアは沢山あると思います。

イソップの寓話に戻れば、
「毎日1個の金の卵では足りない。もっと金が欲しい。」と願う農夫
が、P(成果)をさらに追及するなら、ガチョウの腹を裂く代わりに、
ファイナンシャルプランナーを雇ってリターンの良い投資に手を出すこと
だったかもしれませんね。

P/PCバランスは、コーチングセッションでもよく出てくるテーマです。
いつか皆さんの事例でお話が伺えることを楽しみにしております。

今日のお話はここまでです。
最後までお読み頂きありがとうございます。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門