あなたの「当り前」に眼を向けてみる
今日は、「コア・ビリーフ」についてのお話です。
~~コアビリーフ(Core Belief)って何?~~
さて、クイズをひとつ・・・・
こんな話を打ち明け話を聞きました。
「昼はトラック運転手、時には夜の工事現場でも
働きましたよ。娘を立派に育て上げたい一心でね。
実は好きだった酒も止めてね。
今の娘の姿を見ると、苦労した甲斐があったというもんです。」
このセリフを受けて、当の娘さんに会い
「本当に素晴らしいお父様ですよね」
と言うと、
「いえ、私には父はおりません」と・・・・・
いったい、この2人の関係はどうなっているの?
クイズネタの古典なので、ご承知の方も多いと思いますが、
答えは、「先の発言は「母親」によるもの」 です。
トラック運転手、夜の工事現場、酒、などの言葉が、
無意識のうちに「女性」との関連を遠ざけて、
発言者が「父親」と決め込んでしまう心理を突いたクイズです。
人は皆、コア・ビリーフ(Core Belief)というものを持っています。
直訳すると「中核(的)信念」で、
「コアビリーフとは、人々が自分自身、他者、世界、
そして未来について有する基本的で絶対的な信念のことである」
と学問の上では定義されています。
誕生から現在までの人生、生活の中で、家庭、
親族、友人、教育の場、社会環境、等々から受けた
様々な要因で、コア・ビリーフが形成されます。
コア・ビリーフの形成は、当事者の学習、経験、
他者からの指摘、スリ込み、自認、などによりますが、
ポジティブで適切なものばかりとは限りません。
むしろネガティブなものとして顕在化するケースが
多い様に思います。
偏狭なコアビリーフ
(性別、人種、学歴/職歴、職業への偏見、など)や、
不合理なコアビリーフ
(自己否定、根拠の無い諦め、など)
は、多くの問題の根源として働きます。
適切なコア・ビリーフ、
例えば、「男女は全く平等の存在である」
を持っている人であれば冒頭のクイズには
クイズと呼ぶ価値も無かったはずです。
間違った働きをするコア・ビリーフは、
当然修正していった方がよいのですが・・・、
コア(中核)と呼ばれるくらい非常に堅固なものなので、
当人のあらゆる考え方や行動の基盤となっています。
従ってそう簡単には修正されません。
また、やっかいなのは、意識の層に上がってこずに、
無意識の層に隠されていることが多いということです。
そして、コア・ビリーフが現れたタイミングに、
それを助長する出来事が起きれば、
さらにコア・ビリーフは強化されて行きます。
例えば、「新人は必ず失敗をやらかす」
「こういう職業経験を持っている人は、こう考えがちだ」
などは、実際に新人の失敗や、相手の発言に遭遇すると、
「やっぱりね。自分は正しい。」と、
コア・ビリーフを無意識のうちに強化するのです。
~~ コーチングにおけるコア・ビリーフの扱い ~~
コア・ビリーフを修正しようとすることは、
「人格」「個性」や「価値観」の否定にもつながりかねないので、
たとえ良かれと思っていても十分な注意が必要です。
心理療法や認知行動療法などでも扱われるテーマなので、
うかつに扱えるものではありません。
一切の「医療行為」を行わないことが前提である、
コーチングやアンガーマネジメントの領域では、
コア・ビリーフの善し悪しを評価したり、修正したりする
行為は行いません。
但し、自己と向き合い、自分を見つめる一つの手段として
コア・ビリーフ一に眼を向けるのは有益なことなので、
次の様なケースで用いることがあります。
例えば、コーチングセッションではコーチの質問によって、
自分が大切にしている「価値」と共に、
コア・ビリーフが顔をのぞかせることが少なくありません。
「あなたにとって、何故〇〇は大切なのですか?」
「〇〇が実現すると、あなたの人生にどの様な変化が起きますか?」
等の質問に対して、自身の考えを言語化していく過程で、
クライアントは普段は意識していなかった自分の信念に
気付かれることがあります。
また、アンガーマネジメントでは、
「べき」を、コア・ビリーフを象徴するひとつの言葉としてとらえ、
自分が持っている「べき」
(〇〇はこうであるべき、△△はコレコレをするべき)
を客観的に見つめ、
「怒らなくてもよいことで怒らないようにする」ための
心理トレーニングに用います。
~~ 自分のコア・ビリーフを言語化してみる ~~
負のコア・ビリーフは、
様々な場面でコミュニケーションの問題を引き起こす
原因にもなりますので、心理療法といわないまでも、
一度、セルフコーチングのつもりで、
自分のコア・ビリーフを問うてみることは有益だと思います。
コア・ビリーフは平たい言葉で言えば、「当たり前」。
「自分の当り前」を、リストに書き出して眺めてみてください。
そして、それらが
客観的に見て、
世間の常識や価値観から見て、
多様性に溢れる今という時代から見て、
どう見えるか・・・・、
例えば、
「我慢強さは成功するために不可欠である」
「新人には多少不条理な経験が必要だ」
「アメリカ人は合理的に物事を判断する」
「年寄りは考えることにエネルギーを使わなくなる」
「女性は感情的に物事を判断しがちだ」
「小学生で、そんなことを考えるべきではない」
などなど・・・
(注)上記は例であって、私のコア・ビリーフとは一切関係ありません。
良い悪いの判断はしなくても結構です。
先ずは「どの様に映るのか?」
「このコア・ビリーフを基づいた自分の言動はどう見えるのか?」
を考えてみてください。
興味深い時間になると思います。
~~ 集団的コア・ビリーフが生み出す組織文化 ~~
コア・ビリーフは個々人の中以外に、
集団的に存在するものがあります。
ある組織、集団の中にいると、
「皆の当たり前」が、判断や行動の中に浸透していき、
組織のカルチャー、職場風土に反映されていきます。
組織改革を謳う時、考えなくてはならないポイントですね。
冒頭のクイズでは性別へのコア・ビリーフを扱いましたが、
日本社会でまだまだ男女格差が埋められていないのは、
政治、経済、教育など分野で、
まだ不合理な集団的コア・ビリーフが働いていることが
一因かな、と思います。
2001年の日本の女性の地位は、
世界156ヵ国中120位、という状態ですから。
内閣府のホームページ、「男女共同参画局」より
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/202105_05.html
出張る女性、それを是とする社会。
両者のコア・ビリーフの見直していくことも
地位向上への道程かもしれません。
今日のお話はここまでです。
最後までお読み頂きありがとうございます。