心理的安全性をチームの対話のテーマに

前回は「心理的安全性への誤解」をテーマにしましたが、このブログへ多くの反応がありました。

働き方改革、働かせ方改革、世代ギャップ、価値観の多様性、等々、とかくチーム内コミュケーションの取り方に気を遣い、どの様に組織文化をつくっていくか?日々真剣に立ち向かっているリーダー諸氏にとって「心理的安全性」が誤解を生んではならぬ、という思いが伝わってきます。

「心理的安全性」だけがチームパフォーマンスを上げる手段ではないので、金科玉条の様に扱う必要なありませんが、組織として正しい理解をしておくことは大切と考えます。

今回は、再度「心理的安全性」への間違ったイメージをとり上げた後、いくつかのケースを提示してみたいと思います。

「心理的安全性」の様に、抽象度が高く、多義的にとらえられる言葉、概念に対しては、その本質を問うてみること、他者と会話してみることが重要です。そして、ケース(事例)をあげて、それに対する考えを述べあうのは有効な手段だと思うjからです。

~~ 安全性の誤解 vs 本質 ~~

チームでのケーススタディに入る前に、心理的安全性について誤解されがちなイメージを上げ、本質と対比してみます。前回と少々重複しますが、以下、誤解されがちなイメージです。

  • 誤解されがちなイメージ1.
    ⇒ 何を言っても、何をしても許される“自由”な職場。
    本質は?
    ⇒ 対人リスク(批判・恥・否定)を恐れずに発言・質問・提案ができる場。

  • 誤解されがちなイメージ2.
    ⇒ お互いに優しく、厳しい指摘やフィードバックはしない
    本質は?
    ⇒ 率直で建設的なフィードバックが活発に交わされる状態

  • 誤解されがちなイメージ3.
    ⇒ 仲良しグループのような関係性があれば心理的安全性がある
    本質は?
    ⇒ 馴れ合いではなく、目的のために、お互いの成長のために、言いにくいことも言える信頼関係

  • 誤解されがちなイメージ4.
    ⇒ 心理的安全性があれば成果は自ずと出る
    本質は?
    ⇒ 心理的安全性は“高い成果”を目指すための土台であり手段

  • 誤解されがちなイメージ5.
    ⇒ リーダーは皆に好かれることが大切
    本質は?
    ⇒ 信頼・尊敬されるリーダーは、正直で透明なコミュニケーションを行うことが大切

いかがでしょうか? 

そして、ビジネスには成果責任が不可欠ですから、この視点から心理的安全性に対しての考えを整理することも有効だと思います。成果責任を伴ってこそ、心理的安全性を高める意味があると考えます。

さて、本質が理解できたところで、ケーススタディに移りましょう。

~~ 様々なケースについて考え、対話する ~~

ケーススタディは、具体的な状況や場面を想定することによって、自分事化する発想が生まれ、考えを言語化することで、心理的安全性への理解を深め、誤解を払拭する効果があると考えます。
是非、みなさんのチームで取り上げて考えてみてください。

各ケースの質問の後に回答例も記しました。

ちょっとした紙上研修ですね。

【ケース1】 

  • あるチームのミーティング風景:
    プロジェクトミーティングにて、若手社員Aさんが、「この工程、簡略化できませんか?」と提案したところ、リーダーは「前からこのやり方でうまくいってるから、無理に変える必要はないよ」と返答。その場にいた他のメンバーは沈黙。翌週からAさんはほとんど意見を出さなくなった。
  • ディスカッションポイント:
    ・ このチームに心理的安全性はあると思いますか?
    ・ Aさんの沈黙は何を意味すると思いますか?
    ・ リーダーの対応はどこが問題だったのでしょう?
    ・ あなたがリーダーだったとしたら、どのように返答すればよかったと思いますか?
    ・ このチームが成長するには、どのような改善が必要ですか?

  • こんな意見が出ました(例):
    チームの心理的安全性は低いと考えられます。Aさんは勇気を出して改善提案をしましたが、 即座に否定されたことで、「このチームでは提案が歓迎されない」と感じてしまったのでは。
    リーダーは、提案の意図や背景を聞く姿勢があると良かった。「そう考えた理由を聞かせてくれる?」などの問いがあれば、対話が生まれていたかもしれない。
    提案をすぐに否定するのではなく、一度受け止めた上で共に検討する姿勢が、チーム全体の発言の活性化につながると考えます。

【ケース2】

  • 沈黙するベテラン:
    40代のベテラン社員Bさんは、会議で意見を求められても「特にありません」と発言を控えがち。
    他のメンバーが自由に発言する中でも、Bさんはいつもダンマリで無表情。
    上司も「Bさんはあまりしゃべらない人だから」と特に気にしていない。
  • ディスカッションポイント:
    ・ Bさんは心理的安全性を感じていると言えますか?
    ・上司やチームはBさんにどのように関わるとよいでしょうか?
    ・ 「発言がないこと」が必ずしも悪いとは限りませんが、それをどう見極めますか?

  • こんな意見がでました(例):
    表面上は問題ないように見えますが、Bさんは「心理的に安全だ」と感じていない可能性もあります。
    Bさんの沈黙は「安心して黙っていられる」のか、「萎縮して発言できない」のか、見極めが要ると思います。
    「Bさんは喋らない人だから」と決めつけず、「最近、どうですか?」と気軽に声をかけて会話を促したり、メールなど他のコミュケーション手段を使ってみるのも一考です。
    リーダーや同僚が意図的に話しやすい雰囲気をつくることで、沈黙の意味が明らかになることもあります。

【ケース3】

  • 「ミスの報告」で怒鳴られた新人:
    入社1年目のCさんは不注意からケアレスミスを犯し、大きな影響は無かったものの正直にそれを報告。上司は声を荒げてそのミスを叱責。
    Cさんは「こんな思いをするなら報告しなければよかった」と後悔して、その後はミスを隠すようになった。また、「このミスが起きたのは他者のせいではないか?」という思いが真っ先に頭によぎる癖がついた様な気がする。
  • ディスカッションポイント:
    ・ 上司の対応は心理的安全性にどう影響したでしょうか?
    ・ Cさん気持ちの変化は、今後どのようなリスクを生むと考えられますか?
    ・ 「叱ること」と「安心して報告できる文化」を両立するには、どの様な姿勢が必要ですか?
  • こんな意見がでました(例):
    心理的安全性は大きく損なわれたと言えます。Cさんは報告という正しい行動をとったにも関わらず怒られ、「報告しない方がよかった」と学んでしまった。
    このままでは「隠蔽文化」が生まれかねない。ミスの報告はむしろ褒められるべきで、再発防止の学びにつながるものとして扱うべきです。
    リーダーは、「報告ありがとう、次に活かそう」と言える度量が求められます。

【ケース4】

  • アイデアに対し「時間のムダ」と返された若手:
    会議で、若手のDさんがユニークなアイデアを出したが、上司は「それは現実的じゃない、検討は時間のムダだ」と即却下。他のメンバーもそれに同調。Dさんは良いアイデアが浮かんでも、発言をためらうようになった。
  • ディスカッションポイント:
    ・ 上司の言葉はなぜ心理的安全性を損なうのか?
    ・ 「実現可能性」を問う前に、どんな対応が望ましいですか?
    ・ 「発言を否定しない」ことと「なんでも採用する」ことの違いは?
  • こんな意見がでました(例):
    上司の「時間のムダ」という否定的な言葉は、Dさんだけでなくチーム全体の心理的安全性を損ねています。
    アイデアを「一旦すべて受け入れる」姿勢が重要です。もし、ブレーンストーミングの場であればこれは鉄則です。まずは「面白い視点だね」と認めた上で、現実性を一緒に考えるのが理想です。
    否定せず、問いかけで深掘りすることで、実現可能な形に変わっていくこともありますね。

以上、4つのケースを上げました。 意見の例も加えましたが、これはあくまで一例ですのでディスカッションポイントを共有してチーム内で様々で考えを出し合ってみてください。対話の材料ですね。

何を目的とし、何をもって、「心理的安全性」とするのか? それを考えるのに、マネージャーやリーダーだけが孤軍奮闘する必要はなく、「みんな、これどう思う?」と、チームメンバーを巻き込んで対話をし「そのチームとしての心理的安全性」と定めていくことが大切だと思うのです。

今日のお話はここまでです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門

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