(続)「リフレクション」ってなんだろう?
裏金疑惑と大谷選手のロサンゼルス・ドジャーズ入りの
ニュースに明け暮れた今週でしたね。
ドジャーズ入りの決断。正に「人生の選択」です。
「人生の選択」という言葉から、自己啓発書の大家、
オグ・マンディーノの名前が頭に浮かびました。彼の名著、
「The Choice(邦題;あなたに成功をもたらす人生の選択、
坂本貢一 訳、2002年PHP文庫」
は一読をお薦めします。
Amazonを探ると、もう中古本しか入手できないかも
しれませんが・・・。より良い人生を歩むための「選択」という
視点を学べる良書だと思います。
さて、先週からお話しを始めた「リフレクション」ですが、
コーチングとの共通点もあり奥が深いです。
今週もこのお話を続けたいと思います。
(おそらく、来週も・・・となりそうです)
~~ リフレクションとコーチングの違い ~~
リフレクションをひも解いていくと、コーチングとの
共通点もありますが、基本的には異なる手法と概念です。
リフレクションは主に自分自身が内省によって自己に
焦点を当て、過去の経験や感情から学びを得るプロセス
ですが、一方コーチングは他者(コーチ)がクライアントに
対して質問、提案、フィードバックなどを行うことによって、
目標達成を支援するプロセスです。
しかし、コーチング技法の中にはクライアントに対して
「リフレクション」を促すものが含まれています。
これは主に「質問」によるもので、コーチングにおいては
質問によってクライアントに新たな考えや視点を提供します。
例えば、
「あなたがそう考える理由は何ですか?」
「あなたがどの様に行動すれば理想に近づきますか?」
の様な質問を受ければ、自ずと「内省」が生まれるからです。
つまり、自分の内面に眼を向ける、自分と向き合う、ことを
促すのはリフレクションもコーチングも共通ですが、
そのきっかけが自分自身となるか、他者(コーチ)
となるか、が大きな相違点です。
~~ 自律型人材を育てるリフレクション ~~
リフレクションは、今の時代に求められる「自律型人材」の
育成のために効果的なツールです。
現代は「正解の無い時代」、また、予測困難な
「VUCAの時代」ともいわれています。
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
の頭文字ですね。
かつての、前例や正解を探しにいけば済む時代は、
「答え合わせをすることが近道であり効果的だった時代」
ともいえるでしょう。
しかし、今現在は正解の無い、予測困難な時代です。
この様な状況の中で、「正解」を探しにいったり、安易に
人に答えを求めるのではなく、自分の経験と知恵で「正解」となる
ものをつくりだす内発的動機やエネルギーに満ちた人材、
自ら定めた目的を実現するために学び続ける人材が求められ
ます。それが「自律型人材」です。
逆の見方をすれば、前例があり、正解を探せばよい時代には、
自律型人材もリフレクションも必要なかったと言えるでしょう。
PDCAサイクルを回して答え合わせをし、繰り出された
指示命令(Action)に対して迅速に対応できるする人材
がいれば済んでいたわけです。
しかし、前例の無いものに対応する時代では、PDCAではなく
リフレクションのAARモデルが成果を上げています。
見通し(仮説)=Anticipation
行動 =Action
リフレクション(振り返り)=Reflection
の頭文字をとったもので、
見通しを立てて、行動し、リフレクションを通して、
次の見通しに繋げる、という循環による
「前例の無い時代にの正解の作り方」です。
OECDでは、小中学生にも義務教育の中でAARモデルを
教えることを奨励しています。
また、オランダでは4歳児の子供がリフレクションを学んでいます。
- 過去3ヵ月を振返り、最も誇りに思うワークは何か?
- なぜ、そのワークを誇りに思うのか?
- 一番苦労したことは何か?
- 次に同様のワークに取組む時には、何を変えるのか?
4歳の子供でも、こうした質問に答えられるそうです。
幼児に「内省せよ」といっても無理があるので、コーチングの
手法となる「質問」が有効になりますね。
この話を聴いて思い出したのは、私がコーチングセッションで
よくクライアントにする以下の質問です。
- 今週、上手くいったことは何だろう?
- それ(ら)は何故上手くいったのだろう?
- 今週、上手くいかなかったことは何だろう?
- それ(ら)は何故上手くいかなかったのだろう?
- 次の一手として、来週どんなことに取組んでみたい?
(上手くいった事の加速、いかなかった事のリカバリ―など)
これは、2022年4月1日のメルマガ、
「いざっ!One on One ミーティング! 考え方とヒント」
の中で、1on1ミーティングで有効な質問例として記しています。
これをリーダーがチームメンバーに励行させることで、
チームパフォーマンスが上がったという実績に基づく、コーチングの
世界では良い質問のモデルとされているものですが、
今般AARモデルを知り、コーチングとリフレクションの共通点を
改めて見出した気がします。
~~ 反省 vs リフレクション ~~
AARモデルをご紹介したところで、改めて
「反省」との違いで考えると、リフレクションへの理解が進むと
思います。
反省は結果に焦点をあてる考え方です。
言い換えれば、責任追及であり、変えられない過去に
視点を当てています。
- どんな間違いがあったのか?
- 誰の責任か?
- 言い訳と謝罪。
この状況から、何か未来への価値につながるものを
生み出すことはできません。
反省すること自体悪いことではありませんが、
反省の短所は「学べないこと」です。
申し訳なさ、負い目、恥ずかしさ、といった
心理的安全性が侵されることが先に立ち、
「学ぶ」という心の状態になりにくい、ということでしょう。
リフレクションも過去を振り返る行為ではあるのですが、
経験に「価値がある」と考え、それを学びとして可視化し、
活用します。未来にどう活かすかという発想です。
- 想定した姿と実際の結果のギャップは?
- 何故、ギャップは生まれたのか?
- この経験を次にどう活かすか?
と、考えます。
コーチングにおいても、思い通りに事が運ばなかった事を
「失敗」と呼ばずに、「気づき、学び、成長する機会」と定めて
います。ここにもコーチングとの共通点があります。
上述のオランダの4歳児へのリフレクションで
お気づきになったと思いますが、「実際の結果」は
マイナスだけとは限りません。
上手くいった、成功した、経験についても
考えて学びの機会とします。
なぜ勝てたのだろう、
なぜ交渉がうまくいったのだろう、
なぜ成約できたのだろう、
これらを単に「頑張ったから」「ラッキーだった」と
短絡的に結論づけるのではなく、掘り下げて、
可視化することが大切です。
なぜなら、可視化された学びは他者と共有することが
できるからです。
つまり自分の成功例が、誰かの成功を手助けする
わけですね。
自律型人材は、経験を学びに変える思考を
もつ人なので、こうした視点で考える習慣が
身についています。
そして、自律型人材がチーム内に育成されていけば、
いわゆる「学習する組織」が生まれてくるのは必然でしょう。
さて、自律型人材になるために5つのリフレクションが
有効といわれています。それは、
- 自己を知る
- ビジョンを形成する
- 多様な世界から学ぶ
- 経験から学ぶ
- アンラーンする
です。
最初の4つはイメージが掴みやすいと思いますが、
最後の「アンラーン」はいかがでしょう?
あまり馴染みの無い言葉かもしれませんが、リフレクションに
おいて大切な考え方です。
次回は「アンラーン」を取り上げて、リフレクションのお話を
続けたいと思います。
今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。