無理しないリーダーシップ:心の健康を守りながらチームを引っ張る

ここのところ、リーダーシップをテーマにしたお話が多くなっていますが、今日はリーダーの心が壊れないように予防する方法について考えてみたいと思います。

~~ リーダーが発しているもの ~~

私は管理職研修、リーダーシップ研修の中で、「出社時にリーダーが大切にすること」についてお話をしています。会社なら出社時ですが、スポーツなら練習開始時ですね。

とにかく、疲れている、機嫌が悪い、心配事がある、という「非言語」を発しないこと。
肩を落として、下向いて、眉根にしわ寄せて、・・・こういう非言語コミュニケーションは最悪です。
誰もリーダーにはこんな姿で職場に現れて欲しくないでしょう。

元気に「おはよう!」と笑顔でチームの皆に声をかけながら速足で自席に向かう。これが理想です。
先に出社していれば、出勤してきた部下に「おはよう!」の声がけと「承認」の振舞い。
これがリーダーのあるべき姿です。
部下側に何か相談があれば、朝一番で声がけもし易いです。

ですから、私は管理職研修、リーダーシップ研修で、毎朝鏡の前で「人生最高の笑顔」を作ってから一日をスタートしてください。と言っています。

しかし、ですね・・・・

リーダーだって神様じゃありません。一人の人間です。
上司やリーダーが常にエネルギッシュであることはチームの理想ですが、リーダーが「あるべき姿」に無理に固執して、過度な義務感やプレッシャーを受けると、メンタルへの負担が大きくなり、良いチームパフォーマンスを発揮するどころか自身が潰れてしまうリスクが生じます。

そこで、リーダー自身のライフワークバランス、心の持ち方を考えることが大切になります。

リーダーとしての「自分」を大切にしつつ、部下やメンバーにも良い対人影響力を与えられるために、次の様なことを意識してみてはいかがでしょうか。

~~ 先ずは「メタ認知」で自己の現状と限界を知る ~~

メタ認知は、第三者として客観的に自分を見る方法です。幽体離脱ではないですが、一度今の自分の姿を空から眺めてみることです。(2024年6月20日のブログでとりあげたテーマです)

自分のエネルギーや感情の状態を客観的に観察します。「自分は今どう感じているか」「どのくらい疲れているのか」を認識し、それを素直に受け容れます。

「いや、こんなことでヘコたれるわけにはいかない!」「自分の能力はこんなものではない!」「こんなことではリーダーの資格はない!」と、無理に自身を鼓舞する必要はありません。

「ちょっと無理し過ぎてるな」 と冷静に自身を眺め、エネルギーレベルやモチベーションレベルに点数をつけてみるのもいいでしょう。
エネルギー=5点。半分になっちゃったなぁ~。モチベーション=8点やる気はあるのだけど、行動に移すのがチョットと遅いかな~、とか。

自己卑下や自己否定することなく、淡々と今の自分の状況を見つめてみましょう。

~~ サポートを求めることを恐れない ~~

 リーダーは「すべてを自分で解決しなければならない」と思いがちですが、チームメンバーや他のリーダーと支え合うことで精神的な負担を軽減できます。時にはメンバーに助けを求めることも、信頼関係の構築に繋がります。

部下、チームメンバーにしても、仕事を無茶ぶりされるのではなく「頼られる」という形で協力を依頼されるのは嬉しいはずですし、リーダーの役割を一時的に担うのは成長の機会になるはずです。
「ちょっと頭がオーバーヒートして、良いアイデアが浮かばないのだけど、〇〇さん、手が空いていたらちょっと知恵を貸してくれないか?」とか、
「今日は体調万全ではないので、朝のミーティングは〇〇さんがリードしてくれるか。状況に応じて横からサポートはするから。」とか、

このくらいのことを喜んで手伝ってくれるメンバーとの関係性を作るのは、普段のコミュニケーションに気配りができていれば難しいことではないと思います。

そして、そうした関係性を作るために、リーダーが自分の弱さや苦労を適度にメンバーに共有することも時には効果的です。リーダーが人間味を感じさせることで、メンバーも親しみを持ちやすくなり、チームの団結感も高まります。

日本ラグビー日本代表の姫野和樹選手が、著書にこんなことを書いていました。
自分が絶対的に尊敬するリーダーは、2014年~2021年まで日本代表のキャプテンを務め、ワールドカップでの日本の躍進に活躍した、リーチ・マイケルだそうです。
チームを信頼しまとめる統率力、選手としての技術力、不屈の精神、考え方、等々、正にリーダーだと。
しかし、姫野選手が彼をリーダーとして一番好きなところは、リーチ・マイケルの「不完全さ」だそうです。
いざラグビーとなれば、あれだけのリーダーシップと、選手としてのパフォーマンスを発揮するリーチ・マイケルは、普段は相当おっちょこちょいで、人との約束をシレっと忘れたり、LINEの返信など1週間くらいこないことは茶飯事だそうです。

でも、良いと思いませんか?

ラグビーコートに立てば、リーダー中のリーダー、チームに欠かせないスーパープレーヤーでも、ひとたびラグビーを離れれば、家族を凄く大事にしながらも、振る舞いはそこらへんいるダメダメなオヤジと変わらないというのは。

こういう人間臭さが人を惹き付けるのでしょうね。
自分の弱さ、不完全さを無理やり隠さないことはリーダーにとって必要なことだと思います。
(不完全さといっても、悪口を言うとか、金銭にルーズとか、信頼関係を傷つける類はNGですが)

他チームのリーダーとは、ライバル関係にあるケースもありますが、これも普段からの横の連携をとっておくことは大事です。いざとなったら助けを求められる関係性を作っておきたいですね。


~~ 「やらなければならない」から「やりたい」へのシフト ~~

リーダーとしての役割と責任を自覚すると、その重要さや大きさ故に「義務感」が生まれるのは当然でしょう。

しかしこの、「やらねばならぬ(have to)」から「やりたい(want to)」へ少しでもシフトすることができれば、リーダーの気持ちが折れることは防いでいけるのではないかと思います。

そう簡単なことではありませんが、「やらなければならない」から「やりたい」へのシフトは、別の視点に立ってみたり、認知を転換することによって徐々に実現できます。義務感を楽しさや意味に変えるために、以下の様な方法を試してみることは有効だと考えます。

  1. 「なぜ(Why)」を明確にする
    自分がその仕事や役割に取り組む「理由」や「価値」を探し、考え、言語化してみてください。
    「これは自分やチーム、組織、社会にどのように役立つか?」
    「この役割を果たすことで誰が助かるか?幸せになるか?」
    「自分は、そして部下やメンバーはどの様な成長ができるか?」
    こうした、前向きで大きなWhyを持ち、やりがいを見出すことで、新たな視点を持てると思います。

  2. 「プロセス」に焦点を当てる
    「結果」に意識が集中しすぎると、どうしても義務感が強まりやすくなります。そこで「プロセス」に意識を向けることで、無駄なプレッシャーを軽減することができるのではないでしょうか。
    例えば、「完璧な結果を出さなければ」という考えから、「改善を楽しむ」という視点に切り替えると、途中経過に価値を見出しやすくなり、モチベーションが高まってきます。
    また、大きなゴールに圧倒されるのではなく、途中にある小さな目標(マイルストーン)に注目し、タスクを細かく分けて達成感を少しずつ味わうことも重要です。
    小さな成功を積み重ねることで「達成できる」という自信が生まれ、「義務感」ではなく「楽しさ」の方へ心が傾いていくと思います。

  3. 達成後のポジティブな感情を想像する
    「やらなければならない」という感情から、達成した後どのような気持ちになるか?得られる満足感や喜びの感情、達成感に想像力を働かせてみることは有効です。
    自身のポジティブな感情にフォーカスすることで、「やりたい」気持ちが湧き上がりやすくなりますよね。

  4. 義務感を「挑戦」と捉え直す
    「これは自分の能力を試す絶好の機会だ」「自分を成長させる挑戦だ」という視点にシフトしてみてはどうでしょう。自分がどう変わるかを想像し、この経験が将来にどう役立つかを考える時、自身の中で、やらなければならない=「義務」は「挑戦」に変化していきます。

  5. 自分の強みとリンクさせる
    取り組んでいる仕事で「得意なこと」や「強み」を活かせる領域や場面を探し、自身の強みを活かすことで「自分らしさ」を発揮できれば、義務感よりも「楽しさ」や「誇り」を感じることができるのではないでしょうか。「自分の強みを活かしてやり方をどう工夫できるか?」なんて考えを巡らせてみると、自ずと「やりたい」というモチベーションが湧いてくるのではないでしょうか?

  6. ポジティブなセルフトークを取り入れる
    「やらなければ」ではなく、「やることでこんな成果が得られる」というポジティブなセルフトーク、自分に足して語ることで、意識のシフトが始まります。「この仕事で成長できる」「これは自分の将来に繋がる」といった言語化を習慣にすることで、無意識が自分の気持ちをHave toから Want toへシフトする方向へ導いてくれるはずです。

~~ その他の方法も試す価値あり ~~

以上、リーダーとしてプレッシャーに心を折られることを防ぐ方法をご紹介しましたが、エネルギーやモチベーションを保っていく方法は他にもありますね。例えば・・・

  1. リフレッシュの習慣を持つ
    これはリーダーに限ったことではありませんね。メンタルのバランスを保つためには、仕事の外でリフレッシュできる習慣が重要です。
    運動や趣味も効果がありますが、私のお奨めは「瞑想」です。5分でもOK、最初は雑念が湧いてもOK、途中から寝てしまってもOK、とにかく1日に1回、ゆっくりと呼吸しながら、頭を空っぽにする練習を続けてみてください。慣れてくれば自分をリセットするのに欠かせない習慣になってくると思います。

  2. 相談相手を持つ
    コーチやカウンセラー、信頼できる同僚やメンターと定期的に話すことで、自分の中の感情や課題を整理し、リーダーシップのプレッシャーを軽減できます。客観的な視点を持つことで、気付きを得たり心が軽くなることもあります。
    宣伝になって恐縮ですが、私がコーチングをしているクライアントさんの多くはこうした目的です。

今回ご紹介したようなアプローチを実践し、リーダーとしての役割と自分の心の健康のバランスを取ることで、持続可能なリーダーシップを実現し、チームをより力強く支えることができます。

そして、忘れないでほしいのが、朝の鏡に向かっての笑顔です。

たとえエネルギーやモチベーションが下がっている時でも、鏡の中の自分に優しく微笑みかけてみましょう。

その笑顔には「今日もがんばろう」という励ましと、「今の自分でいいんだよ」という温かな受容の気持ちが込められているはずです。

今日のお話はここまでです。

お読みいただきありがとうございました。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門

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