One on One ミーティング! 考え方とヒント

今週はどのような一週間をお過ごしでしたでしょうか?

「ドライブ・マイ・カー」の国際映画賞受賞で沸いた
週明けのグラミー賞も、ウィル・スミスの平手打ち騒動の方に
話題がさらわれた感があります。

黒人の主演男優賞に関連して思い出されたのが、
今年の1月6日に94歳で他界した
シドニー・ポワチエ(Sidney Poitier)。

1963年「野のゆり」で、黒人の主演男優として初めて
アカデミー賞を受賞しました。

この作品も素晴らしいのですが、
私は1967年の「招かれざる客」が記憶に残る映画です。
久々にDVDを引っ張り出して鑑賞しました。

この映画は人種を超えた結婚(当時はタブーだったでしょう)が
テーマになっていますが、もうひとつ、大切なこと

「人は自分の信じていた枠組みが侵されると、
一番大切なものは何か?を忘れがちになる」
ということを教えてくれます。

それを切々と説く娘の父親(スペンサー・トレーシー)と、
それに潤む眼を向ける母親(キャサリン・ヘップバーン。
同作品で主演女優賞)のシーンが実にいいのですよ~。

枕話が長くなってしまいました。
詳しい話は別の機会に譲りましょう。

さて・・・、
今日はOne on One(1 on 1:ワンオンワン)ミーティングの
お話です。(以下、One on Oneと記します)

~~ 普及し始めたOne on One ~~

One on Oneは、
上司と部下、チームリーダーとメンバーが
1対1のミーティングを持ち、
安心安全の場(心理的安全性)を作る端緒とし、

社員の主体性を育てる、コミュニケーションが良くなる、
アイデアを育む、モチベーションアップにつながる、
離職率を下げる等の効果を期待するという、
ここ数年注目されている職場のプラクティスです。

「One on Oneミーティング」で検索すると、
その進め方の説明や実例の情報が山ほど
入手できますので、ここではその詳細説明は
割愛いたします。

(余談)「シリコンバレーでも実践されている」
とか説明されていると、
何故この一文が必要なの?と思ってしまいますが・・・

4月に新年度を迎える組織にあっては、
新たな仲間、チーム、上司、部下と良い関係性を
作る上で、One on Oneが一層活発になったり、
奨励されたりしているかもしれませんね。

~~ One on Oneへの期待とチャレンジ ~~

実際の効果は?と現場の声を聞くと、
なかなか理想通りにはいかず、

上司の戸惑い、部下の懸念や忖度、
などネガティブなコメントもありますが、

何はともあれ、組織カルチャーを変えようと思うなら
これは実施してみる価値のある活動のひとつだと思います。

何故なら、組織に変化を起こす、カルチャーを変える、
意識改革を起こす、等々、口に出すのは簡単でも
その達成には恐ろしく時間と労力と根気を要するものですから、

One on Oneひとつ始めたからといって、
組織風土やコミュニケーションが即劇的に
変化する様な魔法はありません。

ですから、ネガティブな面に眼を向けて
「意味が無い」とか、「うちには合わない」と判断するには
早いと思います。

他の組織改革のメソッドと同様、
思考錯誤を繰り返して継続していくことが大切です。
2~3年取り組んでみないと、
Before / Afterの比較も評価もできないでしょう。

先ずは取り組んでみましょう。

~~ One on Oneは一種のコーチングセッション ~~

とは言え、従来の1対1の面談では、
指示、評価、アドバイス、叱責、激励、等々、
片方向からのコミュニケーションが殆どで、

時には上司の昔話や自慢話がトッピングされて終了、
というケースが多いででしょうから、
この中身をガラリと変えることを求められる
上司側の困惑も大きいと思います。

そのため、One on Oneを実施するにあたって会社が
上司側にコーチングスキルの研修を受けさせる
ケースもあります。

  • One on Oneの時間は、
    上司やリーダーのための時間ではなく、
    部下やメンバーのための時間。
  • 発言は上司20%に対して、部下が80%。
    上司は傾聴を旨とし、部下が多くの発言、
    回答をすることで、気づきや主体性の育成を促す。

という2つの基本的な枠組みだけを見ても、
正にコーチングと同様の方針ですので、スキルとして
コーチングを学んでおくことはOne on Oneのためには
有効だと考えます。

私の経験でも、
One on Oneの進め方を「本日コーチングのテーマ」として
求めてきたクライアントさんは複数いらっしゃいます。

~~ しかし、クライアントと部下は同じではない ~~

コーチングスキルはOne on Oneに活かせることは
間違いありません。

ただ、注意すべき点は、
コーチングにおいてコーチとクライアントの関係が
「ゴールに向けて伴走する」という
対等で、オープンであるのに対し、

上司と部下の関係は組織という枠組みの中で、
職務、権限、責任、義務、評価、報酬、等々の
動かし難い要因を背景に成り立っているものなので、

上司側としては、即効性のある発言への誘惑、
守りたい威厳。
部下側も嫌われたくないという気遣いや、
言質を取られたくないという思い。

それらがOne on Oneの中で見え隠れし、
期待された効果を減じてしまうことも起こり得ます。

例えば、私が聞いた生の声として、

部下側にいるOne on One経験者のコメントでは、

  • 「何でも話していいよ」と言われても、話題に窮する。
  • オープンとはいえ批判的な話をすると後が怖そう。
  • 上司からの質問が面白くない。(結局タスクの進捗チェックか?)
  • 何か言質と取られそうで警戒感がぬぐえない。 
  • とにかく早くこの時間が終わればよいと思う。
    いい子ちゃんの回答をして切り抜けておきたい。
  • 結局、良い、悪いのコメントが出てきてしまい、
    「ソフトなお仕置きの場」と感じた?

一方、上司側のコメントとしても、

  • 傾聴を心がけていても、 部下の考えが甘いことが
    気になり、 どう諭してやろうかとアレコレ考え始めてしまう。
  • 長い話になると早く結論が聞きたくなり、
    多少イラっとすることがある。 
  • 気づきを与えるという方法がよくわからない。
  • 自分の経験談を語ってやるのが 一番効果的なアドバイスだと
    思えてくる。

    等々・・・ 

冒頭にも書きましたが、組織の大きな目的は、
職場を安心安全の場とし、上司と部下の関係性を
良化するすることによって、生産性向上、
モチベーションアップ、主体性の向上、等々であり、

One on Oneは、その手段のひとつなので、
これだけを切り出して
「うまくいった」とか「いっていない」とかを短期間で
評価してもあまり意味はないと思います。

~~ One on Oneの実践、定着のヒント ~~

具体的な内容には触れませんが、私のクライアントさんの
ケースで以下の試みをしてもらったことがあります。

最初の2回(一ヶ月)のOne on Oneでは、
一切、仕事やタスクについての話(状況についての問い)をせず、
結果、殆ど無駄話で30分を費やした。

基本的な考え方として、

部下が「あなたは凄い人だ」と思わなくても、
あなたの輝かしい実績や、誇るべき経験について
何も知ることがなくても、

最初の2回のOne on One終了時には、
「あなたは信頼できる人だ。何を言っても大丈夫な人だ。」と
理解してもらうことを第一のマイルストーンとしたのです。

3回目のOne on Oneから、部下の方から
相談や悩みが色々出る様になったそうです。

極端な例かもしれませんが、一案です。

以下は、他のクライアントさんの実践から頂いたヒントです。

最初のうちは決められた時間を無理やり埋めることはしない。
話題が無いようなら「少し早いけど今日はここまでにしよう」
と切り上げる。

フィードバックについて理解してもらう。
ここは評価の場ではない。「自分からはこう見えた」と伝えるのみ。

そのフィードバックに対してどう思うかも訊いてみる。
(コーチングにおいては「フィードバックを受入れるも拒絶するも
クライアントの権限」と定めていますが、職場のOne on Oneに
於いては多少アドバイス的に扱った方がよいとの、お考えのもと。Goodです)

私が信ずるところは、

One on Oneを初めから上手くやろうと思わず、
その失敗を恐れないことだと思います。
(世の中の全てのプロコーチも
実は沢山のセッションを失敗してきています)

失敗への、上司としてのセフティーネットとして、
前もってこんなことを宣言しておくのも一考です。

「今日は今までやったことのないコミュニケーションで
対話しようと思うので、ぎこちなくなるかもしれない。
自分らしく振舞えないかもしれない。
でもこの「One on One」ってのは、地道に進めていけば
組織の何かが変わると信じて取り組むので、
理解して協力して欲しい。」と。

上司の正直さに対して何かを感じてくれるはずです。

~~ One on Oneでの質問例 ~~

最後に、コーチングセッションで使われている
「クライアントへの質問」の中から、使えそうなものを
職場One on Oneのエッセンスを加えていくつか
挙げてみようと思います。

部下、メンバーから特に話題が出てこなければ、
質問によって対話を推進してみましょう。
何かのご参考になれば幸いです。

【振り返り系】

  • 今週、上手くいったことは何だろう?
  • それ(ら)は何故上手くいったのだろう?
  • 今週、上手くいかなかったことは何だろう?
  • それ(ら)は何故上手くいかなかったのだろう?
  • 次の一手として、来週どんなことに取組んでみたい?
    (上手くいった事の加速、いかなかった事のリカバリ―など)

【リソースに気付く系】

  • あなたのタスク達成のために、自分(上司)以外に
    どんな人の支援が有効?
  • あなたが一段成長するために、どんなスキルや経験が
    必要だと思う?

【感情面に触れてみる系】

  • 何が出来た?に加え、その時どんな気持ちだったか?
    何を大切に思って臨んだか?など。
  • 先日の〇〇は素晴らしい成果だったけど、その時どんな気持ちだった?
  • 最近一番ワクワクしたことは?(仕事でも、差し支えなければプライベートでも)

【思考の枠を広げる系】

  • このチームの成果を来年度3倍する目標があるとして、
    なんの制約も受けなければ、あなたは何をする?
    (数字は任意。3年で10倍とか、大きな方が思考の枠が外れます)
  • このチームが社内でナンバーワンになれるとしたら、どんな分野で?
    そのために、あなたに出来る事、私(上司)がやるべきことは?

とかとか・・・・ 

コーチングセッションの内容をチラっとご紹介した形になりましたが、
全部は語れませんので、今日のお話はここまでといたします。

ご興味のある方はコーチングセッションでお待ちしております。

長文、最後までお読み頂きありがとうございます。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門