ドラッカーが提唱した OOMMDとは?


今週も様々な話題がありましたが、
渋谷東急本店が閉店されるニュースがメディアでかなり
取り上げられていましたね。

インタビューに答える人が、様々な思い出を語っていました。
家族とよく買い物に来たとか、
通学途中の寄り道場所だったとか、
記念の品物を選んだ場所とか、あるいは、
お客様に愛された店員さんのお話とかとも・・・。

そう考えると、「もう終わってる」と言われてから久しい
「百貨店」という業態は、単にモノを売るだけではなく、
顧客体験(CX)を提供していた、最先端モデルで
あったことに気づきます。

確かに子供の頃、「デパートに行く」というイベントへの
高揚感は凄くありましたね~。
屋上に遊園地とか動物園とかもあったし。

ネット社会の影響も受けながら大きく変化してきた
流通業ですが、これからどの様な顧客体験を
私達に与えてくれるのか?
渋谷の再開発の話と同時に興味が湧いた次第です。

さてさて、ここ暫くコーチング技術のご紹介が続きましたが、
今日は少し趣を変えて、ビジネスのお話です。

~~ 先ずはPDCAサイクルのおさらい ~~

「PDCAサイクル」という言葉をご存知の方は
少なくないでしょう。
生産や業務の改善を目指し、

  • 計画(Plan
  • 実行(Do
  • 評価(Check
  • 対策・改善(Action

の各プロセスを継続的に遂行していくもので、
1950年代に品質管理の父と言われる
W・エドワーズ・デミング博士により提唱された
ものです。

デミング博士をご存知なくても、
統合品質管理の世界最高ランクに与えられる
デミング賞という言葉は馴染みがあると思います。

業務の中では、

  • 「このメンバーでPDCAサイクルをしっかり見守って・・・」
  • 「悪い方向に行ってるのは、PDCAが甘いからだな・・・」
  • 「PDCAサイクルを高速で回すことによって、このサービスの
    競合力を高めていける・・・」

の様に使われる用語です。

デミング博士のそもそもの研究意図は
戦後のアメリカの生産性向上なのですが、
最も彼の恩恵を受けたのが、1950年代の
日本企業です。

その後、「製造大国ニッポン」として、
世界を席巻することになる、モノ作り技術、
品質の高さ、生産性の高さはデミング博士の
伝授に依拠するところが大きいのです。

もちろん、日本人の美意識、器用さ、
誠実さ、勤勉さなどの要素も相まっての
ことですが。

~~ PDCAはもはや使えない? ~~

この「PDCAサイクル」は、
品質管理のみならず様々な領域で
活用されてきました。
スポーツの世界でも使われていたりします。

最近、「PDCAは古い」とか
「使えない」というコメントや
論調を目にすることがありますが、
そもそも、ビジネスの「ツール」としての
セオリーや考え方が万能であるはずがありません。

ビジネス、プロジェクト、生産活動、成長活動などを
見守る上でPDCAサイクルを用いることが
適切であれば使えばよい話なのですね。

それなのに、ビジネスをマネージしていく上で
PDCAサイクルでは補えない部分だけを見て
「使えない」とか「古い」と評することは、
正しい姿であるとは思いません。

例えば、
そもそも「品質管理」「プロセス管理」を目的とした
PDCAサイクルに、マネジメントの大切な要素である
「人のパフォーマンス」や「モチベーションの向上」などを
求めるのは筋違いです。

さらにPDCAの各プロセスの進め方も
正しい方法、合意のとれた方法で進めないと
効果がありません。

ある方から聞いた話です。
評価(Check)の段階で、ものごとが計画通りに
進んでいない状況において、他人の批判や、
犯人捜しの様な意見が続出し、PDCAがその先に
進めなかったと。

「ヒト」と「コト」を綺麗に分けて考えることが苦手な
日本人のメンタリティがある以上、「ヒト」の要素が
重要となる組織運営の中では、PDCAだけによる
管理は様々な課題が生じることは想像に難くありません。

~~ ドラッカーの教え「マネジメント5つの基本」 ~~

では、どうするか?
「マネジメント」の観点で説かれたセオリーに眼をむけると、
マネジメントの父と言われるピーター・F・ドラッカー博士
行きつきます。

デミングが品質管理の父ならば、
ドラッカーは正にマネジメントの父ですね。

その「教え」は膨大な著書、論文、インタビュー
を通じて世に出され、あるものは半世紀以上を
経ているのに、ほどんど価値に経年劣化が無いことには
驚かされます。

ドラッカーは、著書の中で、
知識労働者は
「なぜ働くのか?」「どう働くのか?」を
考えながら仕事を進めるために、
マネジメントはそれに沿う必要があると説いており、
これが、PDCAが「人」の管理には不向きと
言われる所以です。

そして、マネージャーには
5つの基本的な仕事があると述べています。
それは、

  • 目標を定める
    目標をもつべき領域と、それぞれの到達点を決め、行うべきことを決める。
  • 組織化する
    活動、決定、関係を分析し、仕事を分類する。分類した仕事を活動に、
    さらに作業に分割する。活動と作業を組織構造にまとめマネジメントを
    行うものを選ぶ。
  • 動機づけ
    チームをつくり動機づけを行いコミュニケーションを図る。組織において、
    人との関係において、人事において、これを行う。
  • 測定し評価する
    評価のための尺度を決める。尺度の意味と成果を、部下、上司、
    同僚に知らせる。
  • 相互に成長する
    自らを含めて人材を育成する。

です。

お世話になっている、ドラッカー学会の森岡理事は、
講座の中でこれらの英語
Objectives, Organize, Motivate, Measurement, Develop
の頭文字をとり、
OOMMDと称して分かり易く説かれています。

PDCAとOOMMDは適応度や優劣を比較される
ものではありません。
対象と目的が異なるものだと考えます。

OOMMDはPDCAの様な管理サイクルではありませんが、
マネジメントの定点観測や、バランスの評価にも
活用できる考え方です。

お馴染みのPDCAと、ドラッカーの提唱する
5つの基本(OOMMD)を引用して、
ビジネスツールとして用いるセオリーは
適材適所で臨機応変が望ましい、という
お話をさせて頂きました。

ちなみに、ドラッカーのマネジメントについては、
とてもメルマガでご紹介できる内容ではないので、
上述の様な項目説明のみとしていますが、
ご興味のある方はその著書に触れることを
お薦めいたします。

※文末に、今回の記事に関連する参考図書を3冊
記しましたが、ドラッカー著のものは、エッセンシャル版から
お読み頂くことをお薦めします。
また、森岡先生の入門書は、ビジネスシーンに合わせて
解説されているので大変分かり易いです。

~~ OOMMDとコーチング ~~

ドラッカーが生涯のテーマとした「マネジメント」とは、
ビジネスや経営の世界に限ったものではなく、
我々が新しい社会を築いていくために不可欠なもの
と位置付けられています。

従って、その様々な領域でコーチングが力をお手伝いできる
機会は多いと思っていますが、
このOOMMDも例外ではありません。

クライアントがビジネスパーソンの場合、
コーチングセッションで、
3.Motivate:動機づけ、と
5.Develop:相互成長、が
テーマになることが比較的多い感があります。

  • チーム全体のモチベーションが下がっている気がする。
  • 部下のモチベーションを上げるための施策を考えたい。
  • 業務が超多忙で、自らの成長を実感できない日々が
    長く続いている。
  • 部下やメンバーの成長につながる関わり方ができているか
    自信が持てない。

などです。

これは自論ですが、
他の3つの基本の仕事、
目標設定、組織化、評価、については
探せばどこかしらにモデルや前例が見つけられる分野、
つまり応用課題や類似課題として扱えるのもの、
であるのに対して、
人との関係性や、成長・学びという分野は、
環境や相手に応じて、自分のオリジナリティを
発揮することが求められるものだと思うからです。

コーチングセッションを通じて、その様な自分なりの
思考、行動スタイルを作るお手伝いができれば
嬉しい限りです。

今日のお話はここまでです。
最後までお読み頂きありがとうございます。

参考図書:

  • マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則
    P.F.ドラッカー著 上田惇生(翻訳)ダイヤモンド社
    『第5章 22 マネージャーの仕事』
  • ドラッカー名著集14 マネジメント[中]―課題、責任、実践
    P.F.ドラッカー著 上田惇生(翻訳)ダイヤモンド社
    『第31章 マネジメントの仕事』
  • 図解 ドラッカー入門
    森岡謙仁 著 KADOKAWA/中経出版
    『ステージ3 上司とマネージャーのためのマネジメント初級』

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門