対話に「ネガティブフィードバック」をとり入れる
前回にに引き続きテーマは「対話」ですが、その実践編として、「ネガティブフィードバック」について触れたいと思います。
「対話」が深まってくれば、あるいは深まる関係性が出来れば、ネガティブフィードバックは成長のための贈り物として受取れるようになります。
~~ 対話を実践するためのポイント ~~
前回は「対話という仕事」というタイトルで、対話を習慣化し、組織文化の一部にすることの重要性についてお話しいたしましたが、それを実践するためのポイントを整理してみましょう。
- 「聴く」姿勢を意識する
「傾聴」という言葉がもはや一般化していることから、コミュニケーションにおける「聴く」ことの重要さが理解できます。対話を進めるにおいても先ず「聴く」という姿勢が大切です。
しかし多くの場合、マネージャーは相手の話を聴きながら次に何を話そうか、考えをめぐらせてしまいます。
部下、メンバーの話の未熟な点や矛盾点、自分の同じような経験から思い出したこと、良いアドバイスのアイデア、等々に気が行ってしまい、相手の話をしっかり聴くことができません。
先ず相手の話に集中すること。そして最低限のアクティブリスニングのスキル(姿勢、表情、アイコンタクト、うなずき、相づち、リフレイン)を発揮することが不可欠です。
傾聴は「相手の話を促進させる」という効果もあります。 - 建設的なフィードバックを行う
対話の中のフィードバックは、建設的に、かつ双方向から行われることが理想です。(ネガティブフィードバックについては後述します)
フィードバックは、批判、評価、示唆、アドバイスではなく、自分から「こう見える、こう感じる、こう思う」というメッセージであることが基本ですが、上司、部下の対話では、部下の成長や上司の気づきを促す、アドバイス、提案や要望などが含まれていても自然です。
具体的な行動に焦点を当て、良かった点や改善点を積極的に伝える機会になります。 - 対話のテーマを意識する
対話、1on1ミーティングを「特にテーマを決めずに、仕事もプライベートも、何でも話せる場」と定めておくことは間違いではありません。
しかし、アイスブレイクを経て、「さて、今日はどんな話がテーマかな?」と切り出せば、自ずと対話が進んでいく方向が定まります。
キャリア、人間関係、仕事の進捗、ビジネスのアイデア、現場業務の改善点、チームの目標、等々、具体的な話題が上がってくれば、「じゃぁ、それについて対話してみようか」という流れになります。
深堀りしたり、抽象化してみたり、具体例をあげたり・・・テーマを意識することで、対話がより効果的に進められます。
散漫な話題、雑談、ガス抜き、愚痴、などに終始しても、「なんかスッキリした。考えがまとまった。前向きな気持ちになった。」という結果に繋がることは否定しませんが、「仕事としての対話」としては一段階質を上げたいですね。 - オープンクエスチョンを使う
職場では、特に上司から部下への質問は、確認を目的とする「クローズドクエスチョン(Yes/Noだけで答えられる質問)」が多くなりがちですが、相手の思考を促進し、テーマを少しでも深堀りしていくには、オープンクエスチョンが有効です。例えば、
「このプロジェクトを通して何が学べていると感じていますか?」
「どのような状況で私のサポートが有益になると思いますかますか?」
また、部下から上司への質問でも、
「何故、そのアイデアは実行が難しいと思うのですか?」
「このチームの強みはどの様な点だと考えていますか?」
等々、オープンクエスチョンを活用することで、相手の考えを少しでも深いところから引き出し理解することで、対話はより内容の濃いものになってきます。
~~ ネガティブフィードバックの必要性 ~~
お互いが相手の考え方や、その背景にある理由や前提を理解することを基礎とする「対話」において、上述したように、建設的なフィードバッを行うことは大切です。
慣れてくると、表現も言葉選びも上手くなり、フィードバック名人になってきますが、最初は「良いところ」「改善が必要なところ(もっと良くなるところ)」の2つの視点のバランスをとることから始めるのがコツと言われています。
良いところから話が始まるので、相手の心も他者の考えを受入れる準備ができますので、これは有効です。また、チームパフォーマンスを上げるためにも、部下の長所、成果、優れた行動や判断、強みに注目することはモチベーションを高め、信頼関係を築くために効果的です。
しかし、ともするとフィードバックの中身が「ポジティブ承認」に偏ってしまい、本来の目的である、「相手のためを思って与える建設的なコメント」が発しづらくなってしまう傾向も生まれてきます。
そこで、ネガティブフィードバックに注目です。
ネガティブフィードバックは、ネガティブな事、批判的、否定的な意味はありません。
「言いにくいことを敢えて言ってくれた。ありがとう!」という気持ちに導いていく、そして気づきや学びに導いていくフィードバックです。
~~ ネガティブフィードバックは成長につながる“ギフト“ ~~
ネガティブフィードバックに躊躇してしまう原因としては、端的に言えば、「恐れ」だと思います。相手の感情を傷つやしないか? 職場の関係性に悪影響を及ぼしたりしないか? 相手は自分と同じくらいフィードバックへの受容性を持っているか? という恐れです。
ですから、上司が部下から「何か改めるところはありますか?」など、ネガティブフィードバックを求められているケースでも、「特に問題ないよ」「及第点だよ、よくやってくれている」などとお茶を濁すケースが少なくないでしょう。日頃の部下への観察不足も原因ですが。
同様に、上司が部下に「私に何か改善すべき点があったら遠慮なく言って」とネガティブフィードバックを求めても、「いえ、特にありません」が常套句になって、なかなか本音が言えません。
しかし、ネガティブフィードバックは私たちにとって“ギフト”ともいえるものです。それを活用することで、自分自身の成長やキャリアの発展につながる重要なヒント、新たな視点を得ることができるのです。
実際、米国のリーダーシップ開発を専門とするゼンガー&フォークマン社の調査では、仕事で役立った経験として「上司からの厳しい指摘」を挙げる人が72%もいることがわかっています。
また、ビル・ゲイツは「意見してくれる人が必要だ。それによって磨かれるのだから」と語っています。
「自分の課題を率直に教えてほしい」「もっと成長したいから、フィードバックが欲しい」と思う部下は少なくないということです。
また、常に自己の成長に意識が向いている上司であれば、自分のマネジメントスタイルやチームの運営について、部下からの率直な意見は欲しいはずです。
「特に問題ないよ」「特に何もありません」が続くことの方が問題だと思うのです。
では、どうすれば私たちは建設的なフィードバックを受け取れるでしょうか?また与えれれるでしょうか?
~~ ネガティブフィードバックを避ける理由 ~~
なぜ多くの人が(意識的にも、無意識にも)ネガティブフィードバックを避けるのか?
ネガティブフィードバックを伝えることには、以下のようなリスクを感じるからではないでしょうか。
- 相手の感情を傷つける可能性がある
誰でも、自分の弱点やミスを指摘されるのは辛いものです。相手が不快感を示したり、感情的になることを恐れるのは自然な心理です。 - 職場の雰囲気が悪くなるリスク
フィードバックが原因で関係性が悪化したり、チームの連帯感が損なわれることを懸念するマネジャーも多いです。 - ロールモデルの欠如
自分自身が建設的なネガティブフィードバックを受けた経験が少ないため、どう伝えれば良いかわからないという人もいます。
これらの理由から、多くの人がネガティブフィードバックをためらいます。つまり、「何も言われない」というのは、あなた自身に問題がないのではなく、相手がリスクを避けているだけかもしれません。
「本音」の上に、「タテマエ」、「気遣い」、「忖度」、という層が重なって構成されている日本のコミュニケーション文化ではなおさらです。
そこでは先ず、ネガティブフィードバックを与えるHow Toよりも、どうすれば率直で効果的なネガティブフィードバックを受けることができるかのHow Toを考えてみましょう。
どうしたら自己成長ためのギフトを得られるのでしょうか?
ポイントは「相手が言いやすい環境を作ること」です。以下の方法を試してみてください。
- まず自分からオープンにする
フィードバックを求める際には、最初に自分の課題をオープンにすることで、相手の心理的ハードルを下げることができます。たとえば部下は、
「私はスピード重視で仕事を進めるタイプなので、細かい部分を見落としがちです。どうしたら改善できると思いますか?」
上司の立場から求めるなら、「私は目的を明確に説明せずに作業指示を出すことが多いと言われたことがある。忙しい時は特にその傾向が強いらしい。そういう経験ありますか?気持ちよく仕事の指示を受けるために、私にどんなことに気をつけて欲しい?」
こうして、自分の弱点を先に共有することで、相手も安心して意見を伝えやすくなります。呼び水ですね。そして、もし一つでも具体的な指摘をもらえたら、「他にも改善できる点があれば教えてください」と追加で尋ねてみることも大切です。 - 努力目標を共有してサポートを依頼する
「今年は○○を改善するために取り組んでいます。他に直した方がいい点があれば教えてください」と、具体的な努力目標を共有する方法。このとき、「私がこの目標を達成できるよう、何か気づいたことがあれば是非指摘してください」と伝えると、上司や同僚もフィードバックしやすくなります。 - 学びのポイントを尋ねる
もし、上司や同僚がネガティブフィードバックをためらっているようであれば、「私があなたから学べることで、成長に役立つものは何だと思いますか?」と尋ねるのも効果的です。この問いかけは、相手が自ずと自分のスキルや能力を振り返るきっかけにもなり、仕向けられて悪い気はしませんし、自分の発言が威圧的に響く心配を軽減させます。
何を学べばよいか、改善すればよいか、率直に話してくれるはずです。 - 受け入れやすい雰囲気を作る
「もし私が何か一つ変えられるとしたら、どこを改善するのが良いでしょうか?」と軽く切り出すことで、相手も気軽に答えやすくなります。それでも相手が言いにくそうであれば、「これは単なるフィードバックを受けるための練習なので、気軽に教えてください」と付け加えれば、ハードルはぐっと下がりますね。
こうした方法を使うことで、相手が伝えやすい環境を作り、建設的な意見を引き出すことができます。
安心してネガティブフィードバックを与えられたことで、相手のフィードバック技術も磨かれます。
そして、ネガティブフィードバックを受けたら、その内容に真摯に向き合い、改善の行動を示すことも忘れてはなりません。上司も部下もです。
ポジティブにせよ、ネガティブにせよ、フィードバックが組織の行動変容につながれば、本来のフィードバックの価値が明らかになるのです。フィードバック文化の始まりですね。
ネガティブフィードバックは、一見厳しいように思えるかもしれませんが、それを成長の“ギフト”と捉えることで、キャリアや人間関係を大きく飛躍させる力になります。
ぜひ、今日から自分の成長のために周囲との対話を始めてみてください!
今日のお話はここまでです。
最後までお読み頂きありがとうございます。