コーチは課題に向き合わない
今週は9月後半とは思えない異常な暑さで始まりました。
「暑さ寒さも彼岸まで」
この言葉にすがりたい気持ちです。
四季の移り変わりはハッキリしていながらも、その境目は
むしろ穏やかで、「彼岸」がターニングポイントとなって
寒暑の変化を特段肌で感じる、という・・・
先人が日本の気候を見事に表した言葉ですね。
この言葉も、亜熱帯化している日本列島には既に
そぐわないのかもしれません。
もしかすると、死語になってしまうかも・・・。
そんな時代にならないことを祈る晩夏です。
さて今日は久々に、コーチングの基本にお話を
戻しましょう。
私のコーチングセッションのケースもご紹介いたします。
~~ コーチングは臨機応変であっていい ~~
このメルマガで過去2回ほど、
私がコーチングのセオリーにあまり固執しないことを
ご紹介してきました。
つまり、「コーチングありき!」が先だって、
- コーチングは答えを与えるものではない。
- 質問によって相手の気づきを促し行動変容に繋げるもの。
- 課題に目を向けず、自分(クライアント)がどう変わるかに目を向ける。
などのセオリーに固執すると、結局クライアントのために
ならない結果になることが多いからです。
上述した3つはいずれもセオリーとして間違いではありません。
しかし、状況に応じて臨機応変にコミュケーションを
とることが大事だということです。
例えば、職場でコーチングを活用しようとすれば
この臨機応変さが特に大切になってきます。
昨今、職場では「コーチング型マネジメント」が奨励されて
いますが、これは上記の様なコーチングセオリーで
マネジメントを遂行することが目的なのではなく、
- 部下に考えさせる機会を多く与えて主体性を育て、
- 考え方の多様性を受入れ、
- 良い関係性を構築し、
- 心理的安全性を提供し、
- 個々が溌剌と仕事に打ち込める職場を作る、
ことが目的です。
この目的に適うなら、
目まぐるしく変化するビジネスの世界では、
コーチングの対局にある、指示、命令、ティーチング、なども
適宜織り交ぜたコミュニケーションの方が合理的であり、
マネジメントの効果も高いと考えています。
私のコーチングスタイルも、自分の経験や知見を
共有することがクライアントさんのためになると思ったら、
アドバイスや提案をすることを大切にしています。
~~ しかし、このセオリーだけは「ブレて」はいけない ~~
とはいえ・・・・
プロのコーチの「あり方」としては、
肝に銘じておかなければならないことはあります。
「臨機応変」と「ブレる」ことは違いますから。
それは、
「コーチは課題に向き合わない」ということです。
冒頭に
「課題に目を向けず、自分(クライアント)がどう変わるかに目を向ける。」
を上げましたが、稀に
コーチ自身が、「課題に向き合ってしまう」という間違いを犯す
ことがあります。
(正しくは、間違いを犯しそうになり、急いで軌道修正するのですが。)
「なぜ、コーチは課題に向き合わないか?」というと、
クライアントさんと一緒になって課題の解決に取り組んでも、
結果的にクライアントさんのためになる答えを導き出せる
可能性が低いからです。
つまり、
- 課題についての状況、知識はクライアントさんの方が豊富。
- クライアントさんの方が正しい判断基準を持っている。
- 課題解決に向けて行動を起こすのはクライアントさんである。
からなのです。
では、コーチは何をやっているか?と言えば、
クライアントさんが課題解決に向かうための
「視点(考え方)の提供」に他なりません。
~~ 課題に対するクライアントさんへのコーチング例 ~~
私のコーチングセッションで、過去こんなケースがありました。
クライアント:会社員Aさん。30代半ば。
中途採用で入社してきた新メンバー(Bさん)の教育を
任されている。
課題:
Aさんの直属の上司である課長(Mさん)が、時々直接Bさんに
アドバイスや細かい指示を与えていることが散見される。
Aさんは「Bさんの教育担当は私に任せると言っていたのに、
信用されていないのか?Bさんも、私とMさん両方に気を遣って
いるように思えて心配。」という、モヤモヤ感が芽生えてチョット気持ちが
沈みがち。
ここで、もしコーチが、
「任せたと言っているのに、何かと口を挟んでくるMさんが問題なのだな」
と、コーチングの矢先を「Mさんへの対応」に向けたとするとどうでしょう?
「Mさんは、どういう意図でアドバイスしているのだろうか?」とか、
「AさんがMさんに対して起こすべき行動の選択肢はなんだろう?」とか、
課題解決案が頭に浮かび、
結果的にクライアントさんと一緒になって課題に向き合ってしまいます。
これはコーチングではないのですね。
それに、現場にいるわけでもないコーチが表面的な話だけ聞いて、
「Aさんは〇〇すべきだろうな」と考えること自体ナンセンスとも言えます。
「コーチングは答えを与えない」と言われている理由です。
ここでコーチが向き合うのは、課題に取組んでいるAさんです。
例えば、Aさんにこんな質問を投げます。
問:Aさんは、Bさんにどの様に職場の学びを得て欲しいですか?
問:Aさんが、MさんにBさんの教育を手伝ってもらうとしたら、
どんなことをお願いしますか?
問:Aさん自身が、Bさんの教育担当になったことで学んでいることは
なんですか?
問:Bさんの教育について、Aさんが改善したいと思っていることは
なんですか?
・・・・等々です。
こうした質問への答えを考えるうちに、Aさんの行きついた結論は、
- Bさんが自分の部下であるような気持ちで接していたが、それは間違い。
- Mさんのアドバイスは無意味ではない、むしろBさんの育成を加速
するのに役立つ。 - Mさんに限らず、他の課員もBさんの教育に巻き込むことが有効。
であることに気づき、
- 教育の進捗をMさんにマメに報告し、AさんがBさんに直接指導
すべきことと、MさんからBさんに対して声がけして欲しいことを明らかにする。 - Bさんと課員全員との1on1ミーティング設定する。
の2つを次の行動プランとしました。
結果的には、私が想定していた結論や、理想形になっているかも
しれません。
しかしこのケースで、コーチとしては課題に向き合っったり、アドバイスは
一切しませんでした。
Aさん自身が考え、答えを出し、次の具体的な行動も決めた、
ということに、このコーチングの価値があると思います。
正直なところ、課題について自分の経験や知見が豊富だと
ついつい課題解決の方へ気持ちが動き、アドバイス的な質問を
しがちになるのですが、先ず向くのはクライアントさん。
質問によって新しい視点を与え、そして、考えてもらう。
私からのアドバイスや提案があるとしても、その次です。
今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。