もう一人の「観察したい人」

前回のブログの冒頭に書いた心配が現実のものと
なってしまいましたね。台風接近と豪雨です。
コロナ明け、せっかくの久々の帰省も予定を切り上げて
帰られた方も多い様です。
新幹線の運行も大変な影響を受けましたね。

それに加えて、マウイ島の山火事のニュースには驚きました。
人間にはコントロールできない悲劇が地球のあちこちで
発生しています。せめて人間がコントロールできる悲劇、
つまり戦争だけは止めて欲しい。
終戦記念の日もあった今週は切に思った次第です。

さて、「観察」のお話の続きです。
先週は「苦手な人」へ向けた観察を、今週はもう一人の
対象に向けてみましょう。
それは、「ロールモデル」です。

~~ あなたには、ロールモデルがいますか? ~~

ロールモデル。お手本となる人物のことです。

ドラッカー曰く、「上司が新入社員に言うべきことは、
『君が何者なのか私は知らない。しかし、社会に出て
成長したいと思うなら、尊敬できる人を探しなさい。』
という教えである。」 と。

新入社員に限らず、新しい組織、環境に身を投じた者に
とって的確なアドバイスです。

お手本となる人を見つけて、
「5年後には、自分もこんな仕事が出来るようになりたい。」
「こういう風にチームをリードしたい。」「人に影響を与えたい。」
と、意識することは、漠然と自分の成長を願うよりも効果が
あるでしょう。

ですから会社によっては、人材育成や組織の成長のために、
会社が、「ロールモデルとなる人」を定めて、育成し、効果的に
異動、配置をすることを人事政策に取り入れているところもある
と聞きます。

そこまでしなくとも、「自分のロールモデルを設定する」ことを、強く
奨励している会社は少なくありません。ドラッカーが示唆する通り
ですね。

あなたには、今身近に「ロールモデル」となる人物がいますか?
もしいないなら、是非ご自身のロールモデルを定めてください。

「相応しい人なのかどうかわからない」
「畏れ多くて」
などを気にする必要はありません。

「あんな風に仕事が出来るひとになりたいなぁ」という憧れの
気持ちを出発点にして、良い所を自分なりに観察して吸収して
いきましょう。
もし相応しい人でないということが分かったら(人は誰も完璧
ではないですから)もう一度ロールモデルを探せばよいではない
ですか。

ロールモデルは固い契(ちぎり)を強要される関係でもないし、
「師匠!ここ一番、稽古をお願いします!」なんて上下関係に
ある関係でもありません。どんなに職位や年齢に差があっても
「畏れ多い」と尻込みする必要は無いわけです。

もちろん、ロールモデルと定めた人が生涯を通じて師と仰ぐ人
になれば、それは大変幸せなことですし、豊かな人生を生きた
証になることは間違いありません。

ロールモデルを定めて、自分の成長に繋げようと思えば、
必要なのは、「観察」、そして建設的な「なぜ?」という質問です。

なぜ、皆この人についていくんだろう?
どんな言葉を使っている? どんなタイミングで?
どんな非言語を発している?(態度、表情、ジェスチャー)
なぜ、この人はいつも余裕を感じさせるのだろう?
どんな本を読んでいるのだろう?
どうやってプレゼンが上達したんだろう?
この知識の豊富さはどこからきているんだろう?
等々・・・・

自分が定めたロールモデルから有益なものを吸収
しようと思ったら、「観察」と「なぜ?」は必須です。

~~ 30代前半、私の経験 ~~

少し恥ずかしい気もしますが、
私がロールモデルを定めた経験を披露させて頂きます。

今風に言えば「ロールモデルを定めた」ということになる
のでしょうが、ロールモデルという言葉も知られていない
30年前は
「身近にいた尊敬する上司から良いところ多くを盗もう」
という感覚でした。

当時、職場では皆、そういうことはやっていましたから。
先輩から提案書のコピーを頼まれたら、中身はこっそり
拝見して勉強するとか、ですね。

私の場合、先ず、マネるところから始めました。
メモの取り方、コメントの仕方、言葉使い、喩え話のネタ、
提案書の構成、挨拶文の書き方、お詫び文の書き方、
ミーティングの進め方、人の褒め方、叱り方
(ほとんど叱らない人でしたが)、文章の直し方(赤ペン)、
読んでる本、雑誌、など、
観察から得たものを、とにかく真似てみたのです。

メモは、日付の書き方、略語の使い方、構成はそっくり真似て
いましたし、最後は口調まで似てきて、
「安藤さん、最近〇〇さんに口調がそっくり」と笑われたことも
あります。

そして、それらを管理職を目指す肥しにしていました。

なぜ?もいくつかありましたね。
なぜ、あんなに毎晩酒飲んでいるのに、本を読む時間が
あるんだろう?(読書量が凄い上司でしたので)
なぜ、あの発言にお客さんは怒らないのだろう?
なぜ、部長にあそこまで強く言えるのだろう?
なぜ、この人ゴルフが嫌いなんだろう?
等々・・・

この様に書くと、ロールモデルとした上司を全面的に肯定し、
盲従している様に聞こえるかもしれませんが、
上司も聖人君子ではありません。短所も沢山ありました。
しかし、その人との関係性を断ちたいと思うようなヒドイ短所
ではありませんでした。まぁ、誰にでもあるような。

だから、良い点、自分の刺激になるところだけを観察して、
吸収していったんです。

上司の良し悪しは下から(部下から)はよく見える、とは
よく言ったもので、ホントに色々と観察できました。

~~ ロールモデルはマネージャー、リーダーの職務 ~~

当時、その上司本人に向かって、
「あなたは私のロールモデルです。」と言った記憶は
ありません。前述したようにロールモデルという言葉も
使われていませんでしたし。

しかし、「色々と具体的な勉強させて頂いています」
という事は告げて、わからないところは教えを乞うことは
ありました。

そんな時は厭わず教えてくれたり、ヒントをくださったり
しました。

なぜ?の観察から生まれた、
「ベロベロに酔って帰宅しても読書はするんですか?」
という無邪気な質問にも、ちゃんと答えてくれていましたね(笑)

自分がマネージャーやリーダーの立場になった時、
「安藤さんは僕のロールモデルなんです」と言われたことが、
何度かありました。少し照れ臭さを感じたものです。

しかし、考えてみれば、
「部下や後輩のロールモデル、お手本になる」というのは、
マネージャーやリーダーの明らかな役割のひとつですから、
「あなたは私のロールモデルです」と言われたら、照れ臭さなど
感じることなく、
「ああ、自分は当たり前の仕事をキチンで出来ていたのだな」
と思えばよいだけのことなんですね。

「ロールモデル」というと、少々カッコ良い響きがありますが、
尊敬できる人を観察し、良いところを盗んで自分の成長の
糧としていくことは、ビジネス、スポーツ、教育、どこの世界でも
昔から実践されていたことです。

自分の成長やキャリアに少し不安を感じるようなことが
あれば、身近にロールモデルを探して観察し、将来の
自分のビジョンと重ねてみることは有効だと思います。

~~ 反面教師はロールモデルか? ~~

教師と名がつく理由は、本人の意識とは無関係に、何かを
教えてくれているからですね。

悪い「お手本」なのです。
では、お手本だからこの人達もロールモデルかというと、私は
そうは思いませんし、そう呼びたくありません。

ロールモデルは時に「人格」までもお手本として見せてくれる
ことがあります。
正義感、モラルの高さ、人への寛容さ、受容性、などです。
そして、自分もそれに近づきたいと思わせてくれます。

しかし、反面教師からの学びは、「人格」の域にまで及ばせ
たくないのです。

「ああいう人にはなりたくない」と、人格の悪さに視点がいって
しまうと、簡単に人を非難したり、嫌ったり、評価する気持ちが
芽生えることが「癖」にならないか、と心配になるからです。
さらに、ひとつの出来事で人を誤解してしまうという危険も
あります。認知バイアスの危険ですね。

私がお奨めするのは、反面教師から学ぶのは、その人が
やっている、やってしまった、「行為」の愚かさやバカバカしさに
留めるということです。

例えば、パワハラまがいの言動が散見される隣の部のマネージャー。
威圧感のある大きな声、いつも険悪な表情、粗野な言葉、
横柄な態度、労いの無い会話、などなど・・・。
それらが、「やってはいけない」こととして、反面教師から学ぶ
ことであって、そのマネージャーの人格云々に視点を当てても
意味が無いという考え方です。

賛否両論あると思いますが、私は反面教師が身近にいた時、
こんな気持ちで「行為」に観察の目を向けています。

観察対象としてのロールモデルや反面教師。
皆さんはどの様に考えますか?

今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門