一番大切なことは、一番大切なことを、一番大切にすること
今日のテーマ、「一番大切なことは、一番大切なことを一番大切にすること」は、全世界3,000万部、日本でも200万部を売り上げているベストセラー自己啓発書『7つの習慣』の著者であるスティーブン・R・コヴィー(Stephen R. Covey)博士が同書で「第3の習慣:最優先事項を優先する(Put First Things First)」の章で説いていると言われています。
私の手元にある日本語の完訳版にはこのインパクトのあるトートロジー(重言・重複表現)が見当たらず、「最優先事項を優先する」と記されていますが、何はともあれ大切な考え方ですね。
数十年前、最初に同書を読んだ時の「最優先事項を優先する」の理解はビジネスを下敷きにした、時間管理、優先度決め、といったビジネスノウハウの様に捉えました。
「時間管理のマトリックス」という説明があったので、なおさらです。
それはそれで間違っていなかったと思いますが、「最優先事項を優先する」という言葉を、今改めて「一番大切なことは、一番大切なことを一番大切にすること」と読み直し、コーチング視点、自己肯定感視点で考えてみると、「優先順位決め」というノウハウ的な行為よりも、さらに深い含意を感じるのです。
~~ 一番大切なことは、一番大切なことを、一番大切にすること ~~
この言葉を聞いたとき、あなたはどんなことを感じますか?
私はこの言葉に出会ったとき、何か胸の奥がチクリと痛むような感覚を覚えました。
それは、日々の忙しさの中で、本当に大切なことを後回しにしてしまっている自分に気づいたからかもしれません。
この言葉は先述のように、スティーブン・R・コヴィー博士が語っている言葉ですが、シンプルでありながら、とても深い意味を持つこの言葉は、私たちの人生における優先順位の付け方について本質的な問いを投げかけています。
緊急なことに追われる日々
コヴィー博士は「7つの習慣」の中で、第3の習慣として「最優先事項を優先する」ことの重要性を説いています。そして、私たちの活動を「緊急度」と「重要度」という2つの軸で分類する時間管理マトリックスを紹介しています。

ちょっと、ご自身の日常を振り返ってみてください。
朝起きてから夜寝るまで、一体どれだけの「緊急」なことに追われているでしょうか。
次々とくるメール、会議の招集、締め切りが迫るタスク、突発的なトラブル対応・・・等々。
気づけば一日が終わり、「今日も何か忙しかったけれど、本当に大切なことができたのだろうか」と、ふと疑問に思うことはありませんか?
コヴィー博士が指摘する「第2領域」、つまり「重要だが緊急ではない」活動こそが、実は私たちの人生において最も大切な領域ではないかと思うのです。
ここには、人間関係を深めること、長期的なビジョンを描くこと、自己成長のための学び、健康づくり、予防的な準備などが含まれます。
これらは緊急ではないからこそ、つい後回しにされてしまいます。でも考えてみてください。これらこそが、私たちの人生の質を本当に高めてくれるものではないでしょうか。
なぜ大切なことを大切にできないのか
では、なぜ私たちは「一番大切なこと」を「一番大切に」できないのでしょうか?
一つには、緊急性の罠があります。緊急なことは、私たちの注意を強制的に引き寄せます。電話が鳴れば出なければならない、メールが来れば返信しなければならない。そうして、緊急なことばかりに時間を使っているうちに、重要だけれど緊急ではないことは、いつまでも手をつけられないまま残ってしまいがちですね。
しかし、もっと深い理由があるのではないでしょうか。それは、私たちが「自分にとって本当に大切なこと」を、実は明確に認識できていないということです。
毎日の生活の中で、私たちは様々な期待や要求に応えようとします。会社からの期待、上司や同僚からの要求、家族からの期待、友人からの誘い、社会的な常識やルール。そうした外側からの声に応えているうちに、いつしか「自分の声」が聞こえなくなってしまっているのではないでしょうか?
~~ 新しい視点を得ること、それがコーチングの力 ~~
ここで、コーチングが持つ力について考えてみたいと思います。
私たちは、自分一人で考えているとき、どうしても同じ思考パターンの中をぐるぐると回ってしまいがちです。「これは大事」「あれもやらなきゃ」と思いながら、結局何も選べずに時間だけが過ぎていく。あるいは、目の前の緊急なことに対応することが「頑張っている証」だと思い込んでしまう。
コーチングは、そんな私たちに新しい視点や視座を提供する役割を果たします。
優れたコーチは、私たちに答えを与えるのではなく、問いを投げかけてくれます。
「本当にそれがあなたにとって大切なことですか?」
「それは誰の期待に応えようとしているのですか?」
「5年後のあなたは、今日のその選択をどう思うでしょうか?」
こうした問いかけによって、私たちは自分自身を少し高いところから俯瞰できるようになります。
日々の忙しさの中で見失っていた「本当に大切なこと」が、霧が晴れるように見えてくることがあるのです。
コーチングのセッションでは、自分の価値観、人生で実現したいこと、大切にしたい関係性などについて、じっくりと向き合う時間を持つことができます。
それは、まさに第2領域の活動そのものです。緊急ではないけれど、極めて重要な時間。この時間を意識的に確保することで、私たちは自分の人生の舵を、本当に自分で握ることができるようになります。
~~ 自分を見失わないために ~~
もう一つ、私たちが「一番大切なこと」を見失ってしまう大きな理由があります。
それは、外部からの同調圧力、忖度、そして他者との比較です。
現代社会は、特にこの罠が巧妙に仕掛けられていると感じます。SNSを開けば、誰かの成功や幸せそうな姿が目に飛び込んできます。職場では「これが常識」「これが当たり前」という暗黙のルールがあり、それに従わないことへの不安を感じます。
「みんながこうしているから」「期待に応えなければ」「こう思われたくない」。こうした思いに縛られているうちに、私たちは「自分は自分」という当たり前のことを忘れてしまいがちです。
他の誰かと自分を比べて、自分には何かが足りないと感じる。
周りの期待に応えられない自分はダメだと思い込む。本当はやりたくないことなのに、断れずに引き受けてしまう。
こうして、私たちは少しずつ、自分自身から離れていってしまうのです。
でも、よく考えてみてください。あなたの人生を生きているのは、あなた自身です。あなたの時間は、あなたのものです。他の誰かの期待や価値観で、あなたの人生を埋め尽くしてしまっていいのでしょうか。
「自分は自分」。
この当たり前のことを、改めて強く意識することが大切です。
他人は他人の価値観や優先順位を持っています。
それはそれで尊重されるべきものです。
同時に、あなたにはあなたの価値観や優先順位があります。
それもまた、同じように尊重されるべきものなのです。
自分を大切にするということは、わがままになるということではありません。
自分の考え方や価値観を大切にするということは、他人を軽視するということでもありません。
むしろ、自分自身としっかり向き合い、自分の軸を持っているからこそ、他者との健全な関係を築くことができるのです。
自分を見失わずにいるためには、定期的に自分と対話する時間が必要です。
「今、自分は何を感じているのか」「本当は何がしたいのか」「何を大切にしたいのか」。こうした内なる声に、静かに耳を傾ける時間を持つことです。
~~ 一番大切なことを、一番大切にする生き方 ~~
「一番大切なことは、一番大切なことを、一番大切にすること」
この言葉に立ち戻ってみましょう。この言葉が私たちに問いかけているのは、「あなたにとって一番大切なことは何ですか?」ということであり、同時に「あなたは本当にそれを一番大切にしていますか?」ということです。
一番大切なことは、人それぞれ違います。家族との時間かもしれません。自分の成長かもしれません。誰かの役に立つことかもしれません。創造的な活動かもしれません。心の平安かもしれません。
どれが正解ということはありません。
大切なのは、自分にとっての答えを見つけ、それに従って生きることです。
そのためには、まず自分の価値観や優先順位を明確にすることが必要です。
これは一人で考えても良いですし、コーチングを受けながら整理していくこともできます。
大切なのは、外からの声ではなく、自分の内側からの声に耳を傾けることです。
そして、明確になった「大切なこと」を、実際の行動に移していくことです。
第2領域の活動に、意識的に時間を割り当てていくことです。緊急なことに反応するのではなく、重要なことを選択する。これは、意志の力が必要な、勇気ある行動です。
時には、他人の期待に応えられないこともあるでしょう。「ノー」と言わなければならないこともあるでしょう。それでいいのです。
すべての人を満足させることはできません。でも、自分の人生において「一番大切なこと」を守り抜くことは、あなたにしかできないことなのです。
日々の小さな選択の積み重ねが、私たちの人生を形作っています。今日、この瞬間の選択が、明日のあなたを、1年後のあなたを、そして人生の最後の日のあなたを作っていきます。
だからこそ、問い続けてください。「これは本当に自分にとって大切なことだろうか」と。そして、大切だと思えることに、勇気を持って時間とエネルギーを注いでください。
一番大切なことを、一番大切にする。
当たり前のようで、実は最も難しく、そして最も価値のある生き方。それは、自分自身に正直に、自分らしく生きるということ。外側の声ではなく、内側の声に従って生きるということ。
あなたにとっての「一番大切なこと」は何でしょうか。そして、あなたは今、それを一番大切にしているでしょうか。
今日という日は、その問いに向き合い、そして新しい一歩を踏み出すための、かけがえのない日なのではないでしょうか。
今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。