(さらに続)「リフレクション」ってなんだろう?
ダイハツの大規模不正のニュースには驚きました。
今年5月の日野自動車の不正も記憶に新しく、
「モノづくり大国、品質大国ニッポンは、いったい
どこへ行ってしまったのだろう?」と嘆くばかりです。
「モノ言えぬ風土が一因」と報じられていますが、
業界トップ企業、トヨタ参加の大企業であれば、
コミュニケーションや、心理的安全性をテーマにした
社内研修やコーチングが行われていたと思うのですが。
変われない組織、変われないマネジメント、
変えれられない習慣・・・・
今後、様々な事実がケーススタディ化される「事件」
として注目していきたいと思います。
さて、今週は、リフレクションの中の「アンラーン」について
お話しして一旦このテーマを締めくくりたいと思います。
先週まで2週間にわたり、リフレクションとは何か?
何故注目されているのか?
コーチングとの違いは? AARモデルとは?
と、リフレクションをテーマにお話をしてまいりました。
コーチングが様々な領域で活用されているように、
リフレクションの使い道も多様で大変奥が深いものです。
従って、メルマガでリフレクションの全容をお話するのも
無理があるので、極く簡単な説明と、文末での参考図書の
ご紹介をもってご興味ある方への情報提供とさせて頂きたい
と思います。
しかし、ちょっと耳慣れない言葉、「アンラーン」については、
コーチとしての経験から少々具体的に踏み込んでみたいと
考えました。今日はそのお話です。
~~ 4つ認知のフレームワーク ~~
先ず、リフレクションの実践に欠かせない4つの「認知」の
枠組みについて触れておきましょう。
その4つとは、
「意見」、「経験」、「感情」、「価値観」です。
そして、この枠組みを定めている目的は、メタ認知力を高める
ことです。
メタ認知とは、「認知していることを認知している」こと、
すなわち、自分の判断や意見を客観的に俯瞰すること
です。そして、この4つの枠組みを通して可視化することによって、
自分の内面を多面的に探索し、より柔軟な考えや気づきを
得ることができます。
すなわち、
意見—> あなたの意見は何ですか?
経験—> その意見の背景にはどの様な経験(見聞きしたことも含め)や、
経験を通じて知ったことが存在しますか?
感情—> その経験には、どの様な感情が紐づいていますか?
価値観—> 意見、経験、感情を俯瞰して、あなたが大切にしている
ことを明らかにしましょう。
という考えです。
そして、この4つを切り分けて考えていくことが重要で、
切り分ける習慣が身につくと、自己理解や自己変容の力が
大きく向上すると言われています。
「認知」は、過去の経験により形成された「ものの見方」
であり、コーチングの目的である「視点を変える」という観点から
すると「解釈」とも呼ぶこともできると思います。
コーチングにおいては、
「事実は一つだけ、あとは人の数だけ『解釈(=意味付け)』
があるだけ。」
というスタンスでクライアントと会話し、新たな視点を
生み出す手法が使われるわけですが、ここに、
意見、経験、感情、価値観というフレームを用いることが
リフレクションのユニークなところです。
~~ 5つの大切なリフレクション ~~
さて、アンラーンのお話に入る前に。
先週のメルマガで、自律型人材になるために
5つのリフレクションが有効ということに触れました。
- 自己を知る
- ビジョンを形成する
- 多様な世界から学ぶ
- 経験から学ぶ
- アンラーンする
でしたね。
最初の4項目はイメージが掴みやすいと思います、
と述べました。
確かに、なんとなく説明できる、具体例も話せそうな
言葉が並んでいますが、以下、リフレクションの文脈で
簡単に説明したいと思います。
自己を知るリフレクションとは、
「動機の源を探ること」といわれています。
なぜ、その様な気持ちになったのか?感情のフレームで
自己を俯瞰すると、心が無意識が感じ取っているものは
「価値観」の現れとなってきます。
ビジョンを形成するリフレクションとは、
実現したい理想、ありたい姿(イメージ)があり、それと
現実のギャップを探求し、理想に向かう力を最大化する
ことです。これを「クリエイティブ テンション」といい、
志、信念、当事者意識、の意味で使われています。
多様な世界から学ぶリフレクションとは、
「対話」に代表されるものです。
「対話」は、評価、判断を一旦保留にして他者と共感する
聴き方、話し方ですから、このメタ認知で自分と相手の意見の
背景にある、経験、感情、価値観を俯瞰していくことで、
質の良い対話が生まれます。
経験から学ぶリフレクションとは、
経験を知恵に変える、ということです。先週のメルマガで
述べた様に「反省」ではありません。
成功しても失敗しても、経験しているからこそ知っていることが
あり、それを学びに変えていく、という考え方です。
~~ アンラーン(Unlearn)とは? ~~
そして、アンラーンです。
Unlearn=学習のLearnに、否定を意味するUnが付いて
いるので「学ばないこと」「学びの否定」を想像するかも
しれませんが、そうではありません。
アンラーンは学びの否定ではなく、これまでに学んだ知識や
身につけた技術を振り返り、さらなる学びや成長につながる形に
整理し直すプロセスです。
別の言い方をすれば、
「染み着いた『思考の癖』を取り除くこと」になるでしょうか?
思考の癖は、解釈、思い込み、バイアス、偏見、と呼ぶことも
できるかもしれませんが、少しニュアンスが異なります。
アンラーンが「過去の学び(=成功体験)を手放す」という
行為であることを考えれば、その違いがご理解できると思います。
他者の意見、思考を俯瞰し、多様な世界から学ぶことが
できたら、次は自分の殻を破り境界線の外に飛び出す
ことが大切です。そればアンラーンの力によって実践されます。
また、何かの課題に行き詰っている時、頑張っているのだけど
成果が見えない時、アンラーンによるリフレクションが有効に
なります。
私達は、上手くいったことをパターン化することで、
効率の良い仕事のやり方、合理的な考え方を身につけます。
だからこそ「学び」の姿勢は褒められるわけですし、
パターン化できていない人に「学んでないねぇ~」などと揶揄する
わけです。
「この方法で今までうまくやってきた」とか、
「現状維持していれば、なんとかなるはず」という安心材料を
敢えて手放し、
「やったことが無い」とか、「前例がない」、という恐怖に
打ち勝つためのリフレクションです。
このアンラーンという考え方を、コーチングに取り入れて
みようと考えています。やり方としては「内省」ではなく、
「質問」によって行われるのですが。
リフレクションでは、アンラーンについて、
無暗に新しいアイデアを「ねばならぬ的」に取り入れること
ではなく、ビジョンを形成し、志を持ち(クリエイティブテンション)、
新しい世界を「自分ごと化」して引き寄せることが大事だと
説いています。
クライアントにこうした視座を提供できるように、
コーチングにおける「良い質問」を考え出すことが求められますね。
今回はアンラーンについて少々掘り下げましたが、
前述した様にリフレクションは奥が深く、
- 人材育成
- リーダーシップ育成
- コラボレーション促進
- 思考の柔軟性向上
など、広く活用されています。
3週にわたって、お話したのは極く表層的なことなので、
ご興味ある方は関連の書籍を読まれることをお奨め
いたします。
参考図書:
- 「自分の可能性」を広げる リフレクションの技術 西原大貴 著
日本実業出版社 2013年3月29日発売 - リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術
熊平美香 著 ディスカバー・トゥエンティワン 2021年3月19日
今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。