スポーツ指導における「承認」の効果(1)

今週は平年より相当早い梅雨入りのニュースが
各地から入ってきましたね。
関東甲信越も今日あたりと予想され、これから
鬱陶しい日が続きますが、体調を崩されないよう、
ご自愛ください。

日曜日は館山トライアスロンに参加してきました。
昨年より記録は1分ほど後退したのですが、
綺麗な海を泳ぎ、自衛隊基地内を疾走し、
楽しく完走できました。

さて、スポーツ指導におけるコーチングの効用について、
前回までコーチングの3要素である
承認、傾聴、質問、の3要素の中から「質問」と、
その効果や手法についてお話をしてまいりました。。

今日は、3要素から「承認」についてお話をさせて頂きます。

~~ 承認とはどの様な行為なのか? ~~

「承認」という言葉から、会社組織で働いた経験がある方は、
承認申請という言葉や経験が思い出されたかもしれません。

仕事上の手続きの「承認」は、
「あなたの言う事は理解した。会社としてその申し出を認める。
任せる。承認した自分も責任を担う。」
という意味になるので少々重たい意味あいがあります。

一方、コーチングにおける承認とは、
「相手の存在、価値、言動、成果を認める。」
という意味です。

コーチングでの「承認」は

  • 相手との良い関係性をつくる
  • 相手に安心・安全の場を提供する
  • 相手の自己肯定感や自己効力感を高める
  • 相手の行動へのモチベーションがあがる

などを目的としています。

これが、「傾聴」「質問」と並んで
コーチングセッションで重要な役割を果たす
コミュニケーションと言われている所以です。

「承認」の効果はスポーツ指導の世界でも同様ですので、
是非、選手とのコミュニケーションに取り入れてみてください。

~~ 「成果承認」と「存在承認」 ~~

承認には、
「成果承認」と「存在承認」があるのですが、
みなさんは普段無意識のうちに使い分けていると思います。

「成果承認」は字の通り。
何かを達成した時、成功したときの承認です。
「お見事!」「よくやったね!」「素晴らしい!」などの賛辞を、
満面の笑顔、握手、肩を叩く、などで表します。

仮に何かを達成するという「成果」が満たされなくても
「よく頑張った!」と、その努力を成果として讃えることは
あるので、これも「成果承認」と言えると思います。

いずれにしても、誰から見てもわかること、共感できること、
が対象になります。

「成果承認」は、わかり易い「承認」です。
この機会を多くしたければ、
「達成目標」の途中にある「成果目標」に注目することと、
チームや選手をよく観察することが必要です。

最終目標(例えば大会での優勝)は未だ先だが、
日々の練習の中で、成長が見えた時、
「今まで出来なかったことが今日は出来るようになった」
という意図で「成果承認」を伝えられますね。

「成長目標」への注目とチームと選手の観察が必要と
述べた理由は、「成果承認」が単なる誉め言葉の連発に
ならないようように、また選手間の不公平感を生み出さない
ようにとの注意からです。

一方、「存在承認」の機会は、日々あなたの周りに
山ほどあります。

「存在承認」とは、「あなたの存在を尊重する」ということ
伝えることです。

一番簡単な例は、挨拶を交わすこと。
体育館に入ってきた選手に
「おはよう!調子はどうだ?」
出社してきた社員に
「おはよう!何か良い事あったみたいだね」
・・・・と。 実に簡単な言葉がけです。

  • 私は、あなたがそこにいることを知っています。
  • チームの一員であることを認めています。
  • あなたのことをいつも見ていますよ。
  • あなたに関心を持っていますよ。

ということを伝える「承認」です。

「愛情」の反対は「憎しみ」ではなく
「無関心」である・・は、
ノーベル平和賞を受賞したユダヤ人作家
エリ・ヴィーゼル氏の言葉として引用されていますが、
まったくその通りだと思います。

無視される、疎外される、関心を持たれない、
会話をしない・・・。
こんな扱いをされた精神的な痛みは、人から
自己肯定感や自己有用感を急速に奪っていきます。

逆に、
「いつもあなたのことは見ているよ」
「あなたことは理解しているよ」 という人が
いるだけで、心のエネルギーやモチベーションの
レベルは大いに違ってきますね。

~~ 家族の愛情は無言の「存在承認」 ~~

スポーツ選手の優勝や受賞のスピーチで、
「家族の存在が大きかった」とか、
「家族の支えがあって」と、いう言葉をよく聞きます。

ご家族の方は、その選手が日々チャレンジしている
成長目標、例えば
「この1ヵ月でタイムを1秒縮めるのだ!」など
あまり知らないと思うし、知りたいとも思わないのでは?

ですからもし、ご家族から得た様々なサポートの
中に「承認」に相当するものがあれば、それは正に
「存在承認」なのだろうと思います。

「あなたは今日も元気でいてくれる」
「あなたは怪我をしないで帰宅した」
「あなたはご飯を沢山食べてくれる」
「あなたはいつも家族に笑顔を向けてくれる」
「あなたが家族でよかったな」
「あなたがいてくれるだけで家族は幸せ」
「家族はいつもあなたの味方だよ」
「成果」なんてなんだっていい、
・・・・と。

選手にとっては、
自分を理解してくれる人、力づけてくれる人、
何でも話せる人、自分の居場所、安全な場所、
心休まる場があることを切に感じることでしょう。

~~ 承認には注意も必要 ~~

さて、ここまでコーチングセッションで使われる技術が
普段のコミュニケーションでも有効である、
スポーツ指導の場においても有効である、
と言う前提の下に、その技術のひとつである
「承認」
についてお話してきました。

それは間違いの無いことなのですが、
コーチングセッションは、クライアントが
コーチングを受けていることを認識して
会話をしている場です。
つまり、コーチとの間の信頼関係は既に
築かれています。

ですから、関係性や状況を考えず、
承認を連発しても効果が薄い、あるいは
逆効果になるケースもあります。

挨拶などはどんどんやるべきですが、
その先の声がけで、若い女性社員に対して
「〇〇さん、髪型変えたね。よく似合うよ。」
などと言えば、
「いったいいつも私のどこ見てんの?キモイ!」
とセクハラ扱いになることも珍しくないのが今の時代です。

これも相手との関係性次第なのですが、
注意が必要ですね。

次回は「承認」する際の注意点を
事例を交えてご紹介していこうと思います。

今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門