アドバイスを避けたい理由とは?

猛暑の中、一服の清涼剤の様なニュースが欲しいのに、
家族ぐるみの死体領得事件やら、大手中古車業者の
前代未聞の不正やらと・・・・、
爽やかな話題が渇望される週でした。

呆れたのは、大手中古車業者の不正。
不正行為そのものにも驚きますが、その行為を普通のこと
として仕事の中に「定着」させてしまった企業組織と風土に
驚きを禁じ得ません。

人を動かすのに、未だにこういうマネジメントが
(マネジメントとは言えませんが)行われているのですね。

今回顕在化した事案以外でも、
組織階層が生み出す力(パワー)と不条理に疑問を抱きながらも
粛々と働いている人達は少なくないと思います。
エグゼクティブ・コーチングや企業研修によって、企業文化の改善を
お手伝いし、僅かでも現状の改善に役立てればと、思う次第です。

さて、今日はコーチングセッションにおいて
私が普段注意していることについてご紹介してみたいと
思います。
それは「アドバイス」の扱い方です。

~~ 私のコーチングポリシー ~~

以下、既にご存知の方も多いと思いますが、おさらいです。

コーチングは、
ティーチング、アドバイス、カウンセリング、コンサルティング、
セラピー等とは異なるジャンルの対人支援コミュニケーションです。

コーチはクライアントに対して、
教えたり、示唆したり、助言したり、一緒に問題解決をしたり、
癒したりすることなく、
その代わりに、質問、フィードバック、提案などを通じて
クライアントに新しい視点を提供し、クライアントの主体的な
考えや行動を引き出す、という役目を担います。

とはいえ、私がコーチングをお引受けするときに、あまりこの原則に
固執しません。
セッション開始前のオリエンテーションで、テーマや方針などを
確認、合意するのですが、
「安藤さんの経験からアドバイスがあれば遠慮なくしてください」
というリクエストを頂くことが少なくありません。

私自身、自らの経験で役に立ちそうなものを抽象化して、
クライアントへのフィードバックに織り交ぜて伝えることが結果的に
価値のあるコーチングに繋がると思えば臨機応変にそうしています。
またそれは自分のコーチングの価値でもあり、
他のコーチとの差別化にもなると考えているからです。

クライアントはこれを、「アドバイス」と言語化しますが、
私は極力「アドバイス」という言葉を避けて、フィードバック、
提案、情報共有などと表現しています。何故でしょう?

~~ アドバイスの功罪 ~~

アドバイスは助言ですので、
課題に直面している、迷っている相手を助けることが目的になります。

「こうした考えで進めてみては?」
「〇〇がいいのでは?」
「〇〇すべきだと思うよ」
と・・・
これは一見ありがたいことなのですが、
アドバイスは同時に以下の様なリスクを含んでいます。

  • アドバイスする人のできる範囲や、視点で考えられることが多い。
  • アドバイスする人の経験に基づくことが多い。
  • アドバイスを受ける側の忖度(そんたく)で受入れられることが多い。
  • 助言を受けたことに安心してしまい、思考の枠が固定化されてしまう。

1番目、2番目、については、他人の視点、経験からくるアドバイスだからこそ、
貴重なのだ、真摯に耳を傾けるべきものだ、というご意見もあるでしょう。
確かにその通りです。
しかし、アドバイザーには甚だ失礼ですが、アドバイザーの資質、能力や
そのアドバイスが生まれた背景などについても考えてみる必要があります。

3番目では尊敬する方や地位が上の方からのアドバイスは、先ず是として
聴いてしまう、というメンタリティーが働きやすいです。そして1、2番目と
同様に客観的な視点が忘れられてしまう可能性があります。

4番目は課題に対して良い答えをもらった、あるいはみつけた、という安心から
その考えに固執してしまい、発想が広がりにくくなるというリスクです。

上記4つはいずれも、クライアント側の「考える機会を奪う」
リスクとも言えます。

極端な事を言えば、毎回アドバイスを受けてそれを実行し、上手く事が
運んでいたら、結局自分で考えなくなりますよね。

そこでコーチングの肝とも言える「質問」の登場です。
~~ 自分で考えざるを得ない「質問」 ~~

なるほど、はいはい、いいね、ありがとう、と受け流せるアドバイスに対して、
「質問」は、それに答えるために、
どうしても自分の頭で考えなくてはなりません。

アドバイスも質問も、たとえそれらが同じ解を導いたとしても、
他人の助言でみつけたものか?
自分の頭で考えた結果か?
の違いは大きく、その解に対する主体性、自分事として考える、
レベルには雲泥の差が生じるでしょう。
その後に続くべき行動についても違ってくると思います。

前述したアドバイスは、助言のしっぱなしではなく、
「こうした考えで進めるのが打ち手のひとつだと思うけど、他にはどんな方法があるかな?
「〇〇がいいと思うけど、優先度をどの様に考える?
「普通に考えれば〇〇すべきだとは思うけど、仮にこれを放置した場合の影響度は?
と、質問に変えることができます。

アドバイスを「まぁ、ひとつの考え方として」と、冷静に受け止める人でも、
助言の語尾が「~と思うのだけど、あなたはどう思う?」
と、質問に変化したら、ドキっとするはずです。
「いいと思いますよ。」と一旦応じておくだけになるかもしれませんが、
質問によって急に自分事になってくるはずです。

これがコーチングにおいて「質問の力」と表される所以です。

「あぁ、ホントに良いアドバイスをもらえたなぁ」と思えた時ほど、
それを有難がって丸々受けとめるだけでなく、
その助言に対して自分はどう考えるか?
直ちに自分への問いを立ててみてください。

それによって、そのアドバイスの価値も膨らんでくると思います。

今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門