対話フェーズを知らなかった私の例
今や世界の宝と称される、大谷選手のオールスターゲームへの
3年連続出場、素晴らしいですね。
それよりも6月からの大爆発は凄すぎました。
そんな大谷選手の、現地の人との会話で
面白いことに気づきました。
チームメイトとは気軽に話している様子は、
NHKの試合中継から伺えますし、
試合後の会見で、水原通訳を通じての会話は
しっかり記者席を見ています。
ところが・・・、レポーターからの1対1のインタビューになると、
水原通訳の顔を見ながら回答するのです。
質問をしている相手にではなく、水原通訳に話しかけているんですね。
これは、ビジネスの世界でもよく見られることですし、
逆に外国人側も通訳者に話かけるケースも見てきました。
大谷選手の場合、レポーターが相手だと少し緊張とか
照れとかあるのかなぁ、とも思ったのですが、恐らく、
水原通訳との関係性に依るものなのでしょう。
話者にとっては、通訳という手段(道具)の役割を
果たしていればそれで済むのでしょうが、大谷選手にとっての
水原通訳は自分の分身の様な親密な相方として存在し、
決して道具などではなく、常に仲間として一緒に会話したい人
なのだな、と感じました。
大谷選手の誠実さの一面を知る思いがして、この三角会話を
いつも微笑ましく見ています。
さて、今日は「対話」について、
自分の経験からお話してみようと思います。
~~ あの時、先に「対話」をしていれば・・・ ~~
私の経験から、対話フェーズを省いたがために、
余計なエネルギーを費やしたお話をご紹介して、「対話」の
効果に触れていきたいと思います。
私のキャリアは、全て外資系IT企業の日本法人で、
様々や職に就いていますが、その中に、
営業の責任者、マーケティングの責任者、も含まれます。
マーケティングと営業は、バリューチェーンの中でも
密に連携している部門です。
一方、「マーケティングはサイエンス(科学)」、
「営業はアート(芸術)」という言葉が象徴するように、
相容れない文化、価値観を持っています。
そういう意味で、両方の部門責任者を経験したことは
有意義なキャリアだったと思います。
ご紹介する事例は以下の通りです。
もう十数年前の話です。
「対話フェーズを省いた」というより、私は「対話」という
コミュニケーションの方法を知らなかった時代でした。
私は、営業の責任者。
マーケティング部から、マーケティングイベントの開催にあたり、
営業部と、開催時期やテーマについて検討したい、との
打合せあり。
私のバイアス(先入観)。
マーケティング部は、リード(案件)の創出を
パフォーマンスの指標(KPI)にしているので、
イベントでどのくらい見込み客を創れたか、
良い数字を米国本社に報告したい。(これは事実)
よって、既に営業が開拓して継続コンタクトしている
見込み客がイベントに来場した際も、新規案件開拓の
数字として本社に報告している。
(セールス・オートメーション・ツールが使われている
現在では矛盾が露呈する方法ですが・・・)
私の部下の若手営業などは、これを良く思っておらず、
自らの営業としての顧客開拓力を蔑ろにされている
イメージを持っている。
マーケティング部を「セミナー屋」と揶揄し、イベントに
ついては冷めた目で見ている。
そんな、若手営業からの苦言もあって、彼自身も
参加したマーケティング部との検討ミーティングは、
最初から少々戦闘ムードに。
~~ 議論は「べき」で溢れている ~~
当時は「対話」の大切さ、など学んでいないので、
いきなり議論から入りました。
議論に使われる言葉の特徴に、「べき」があります。
自分の考えを主張する場であり、決断、結論を
求める場ですから、「べき」が使われるのは自然なの
ですが、相手の考えや立場を理解しないまま、
「べき」の応酬になると、無用な感情の摩擦まで
生じてきます。
以前、アンガーマネジメントのお話をした際に、
怒りのそもそもの原因は「べき」だと述べた様に、
「べき」が多い会話は感情的になりやすいものです。
- マーケティングはもっと案件創出に効果のある
コンテンツを考えるべきだ。 - 小さなセミナーの開催はもういいから、その予算を
大きなイベント開催に向けるべきだ。 - 本社への案件数報告に、営業部が創出した案件は
入れるべきでない。
等々、営業部が主張の連発です。
マーケティング部は説明で応じますが、さらに、
- メディアによるイベントへの集客では参加者の職位が
限られている。もっと営業のコンタクトによる上位マネジメントの
勧誘に力を注ぐべきである。 - セミナー開催後の参加者への営業のフォローが甘い。
もっと迅速に行うべきである。
等々、反撃に出ます。
結局、数回の議論を繰り返し、当初の目的である、
イベントの開催日、テーマ、集客目標、各部の役割分担、
などが決まってきます。
意見の対立も、いわゆる「落とし所」が決まり、合意形成が
為されプロジェクトは進んでいきます。
しかし、その過程で部門長間のオフラインのミーティング
(飲み会)があったり、若手営業のガス抜きが
必要だったり、結構無駄なエネルギーが使われました。
「いやいや、そういう過程を経て組織は学び、人間関係も
成長してくるんだよ」
というご意見もあるかもしれませんが、10数年前の
こうした事例を是として今に引き継ぐことは、無駄だと
思うのです。
両者合意の結論に導いた要因は、何のことはない
組織間で協力し合う、「お互い様」という視点でした。
~~ オープンな会話とは、自分を正直に出すこと ~~
こうした遠回りの議論が進み、紆余曲折の経過の中で、
ポロポロと出てきたのは、当事者たちの本音です。
対話に不可欠なオープンな会話とは正に「私は〇〇と
考える」ということを躊躇なく発言することです。
それなのに、最初から議論に突入するや、
「本社のマーケティング本部がこう言っている。」
「うちの営業部員がそう言っている。」
「他社で上手くいっているケースにこんなのがあった。」
「昨年の来場者からの案件化数は〇〇%しかなかった」など、
自分の考えを通したいがために、あるいは相手を論破したいために、
他人の意見を引き合いに出したり、客観的な視点から発言したり、
建て前でモノを言う傾向になりがちでした。
もし、「対話フェーズ」があって、先ずは当事者が本音をさらし合って、
お互いの考えや、その背景を理解していれば、「議論フェーズ」では、
建設的なアイデアがもっと早く交換できたのだと思います。
本音をさらすとは他の誰でもない、「私」を主語に会話することです。
例えば、マーケティング部から、
(私は)本社にイベントの成果をアピールして、来年度の日本への予算を
増額してもらう材料にしたい。
(私は)本社の意向も受入れながら日本市場向けのコンテンツを
もっと厚くしていきたいと考えている。
例えば、営業部から、
(私は)結果的に販売成果につながらないイベントはしたくない。
開催には賛成だか、時期を再考する必要があると思う。何故なら・・・
(私は)お客さんをイベントに招くことで、上司や、日本の幹部とも
気軽な形で引き合わせることができるので、そういう意味でも
イベントには価値があると思う。そして満場感のある形にしたい。
そして、「お互い様」の視点が導いたアクションプランは、
- 本社への報告数値に嘘はいけないが、営業努力で開拓したという
主張ばかりを通すのではなく、イベントの効果がアピールできる
報告の策定に営業部も協力する。 - 来年へ向けてイベントのコンテンツを魅力あるものにするために、
営業部は顧客に事例発表の依頼をお願いを今から仕込んでおく。 - 来場者へのフォローを迅速化するために、フォロー体制にメリハリを
つけ、営業によるフォローの他に、マーケティング部のリソースである
コールセンターも使用する。
などでした。
お互いに相手が困ることは、めぐりめぐって自分も困ることになる。
だから相手を理解しておくことで、議論が無暗に感情的にならず、
建設的な落とし所をさぐる方向へ流れるようにしていくことが、
大事になってきます。
今振り返ってみると、こういう遠回りの議論にずいぶんエネルギーを
費やしてきた感があります。
さて、「対話」という言葉が使われる頻度が多い状況に
「労使間の対話」がありますね。
最初から「労使間の議論」ってあまり聞きません。
お互いに同じ船に乗り、利害を共にする関係においては、
先ず相互の立場を理解する「対話」から始めるのが効果的で
あることを双方が熟知しているからでしょう。
もちろん例外もありますし、話が平行線ということもあるでしょうが、
「対話フェーズ」の大切さをよく表している言葉だと思います。
今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。