試合中に役立つ「ミスの儀式」とは?
さて、先週は人を励ます「言葉選び」についてお話をしましたが、
今週もこのお話を続けます。
~~ ときに、無責任を感じさせてしまう激励の言葉 ~~
先週、「頑張れ」は、評価言語として使うと効果的だが、
激励の声がけとしては逆効果になるケースもある、
というお話をしましたが、同じような言葉に、
大丈夫!
ドンマイ!
などがあります。
ドンマイは Don’t mind(気にするな)の和製英語に
由来する、昭和の時代から使われている言葉ですね。
普段、この言葉で人を励ましている方々にとっては、
「何がいけないの?」と思われるでしょう。
決して「いけない」とか「禁句」という訳ではないのです。
「頑張れ」と同様、人によっては激励の効果がない、
ということです。
大丈夫!や、ドンマイ!は、
あるアンケートによると、
「軽い」、「無責任」、という印象を与えるようです。
「頑張れ」に対して、「これ以上何を頑張るんだよ~」
と感じるのと同様、「大丈夫!」に対して、
「何が大丈夫だよ、外野が無責任なこと言いやがって」
が内なる声として上がってくることがあるそうです。
こうしたネガティブ反応になる原因は、
声がけされる方に、言葉を受入れるだけの
心のゆとりが無いからです。
そのくらい、切羽詰まっている、落ち込んでいる、
ということですね。
「何がドンマイだよ!」も同じ原因です。
ですから、「大丈夫、大丈夫」の連呼ではなく、
相手の心を奮い立たせるなら、
「今までやってきたことに自信をもって!君なら大丈夫だよ。」
とか、
「皆が応援してるから、大丈夫だ。」
と、丁寧な表現を用いて、相手の心に少しスペースを
作ってあげることが必要です。
~~ 軽い声がけは「ミスの儀式」に使える ~~
上述の様に、
相手が悩みを打ち明けている時、相談を受けたとき、
残念な話を聞かされた時、
「大丈夫、大丈夫」「ドンマイ、気にすることはない」
という軽い声がけは、気持ちのゆとりの無い相手から
反感を買うこともあるのですが、逆に活用の場もあるのです。
それはスポーツにおける、
「ミスの儀式(ミステイク リチュアル – Mistake Rituals)」
と呼ばれているもので、予め決めておいた簡単な言葉やジェスチャー
(儀式)によって気持ちを切り替える方法です。
ミスやエラーはチームにとって貴重な学びの機会となりますが、
試合中に起きると、ましてや試合の重要な局面で起きると、
チームのムードを悪くしたり、意思疎通を悪くさせてさらに
ミスを誘発する、いわゆるミスの連鎖の原因にもなります。
そして、ミスをした当事者の心に、焦り、負い目、自己嫌悪などが
生まれます。
この様な状況で、
ミスは避けられないものとして受入れ、選手、監督、コーチは
一番大切なことに集中する。
すなわち気持ちをリセットして次のプレイに臨むことです。
なにしろ試合は続いているのですから。
このリセットに使われるのが「ミスの儀式」です。
予め練習の時からミスに対してお互いに掛け合う言葉や
ジャスチャーをチームで決めておき、試合中にミスやエラーが
起きた時には、当事者とチームの全員が、即座にその儀式を
行うことで「気持ちを切り替えて、チーム一丸で前に進む」
ということを約束事にしておくのです。
儀式として、約束事として取り決めているかどうか、
定かではありませんが、よく見かけませんか?
野球で野手がエラーする。
その直後、野手全員がアウトカウント数だけ指を立てて、
(例えば2アウトだったら、人差し指と小指)、
「ツーアウト、ツーアウト」と声をかけ合う。
これは、「あと一つでチェンジだよ。そのくらいのエラー大丈夫」
「気を引き締めて、あとひとつ確実にアウトとろうぜ!
という意思の共有なのだと思います。
バレーボールでサーブをミスする。
ラリーポイント制ですから相手に簡単に点をやってしまう。
サーバーがコートに入ると、周りの選手が皆手を出して
ハンドタッチを交わす。
肩から下の高さですね。ハイタッチは良い時の儀式ですから。
あれも、お互いの身体に触れることで、
「ミスを誰も責めちゃいないよ。僕らは仲間だろ」
という、一種動物的なリアクションにも思えます。
そして野球のケースでも、バレーボールのケースでも、
エラーした当人が自分で頭を叩いてみたり、
詫びのポーズをとったりしないのも印象的です。
試合中は自分にネガティブな影響を与えない、という
約束事に見えます。
言葉だけでなく、ジェスチャーや身体の接触をもって
リセット効果を狙う「ミスの儀式」。
この中では、短くて軽い言葉でも効果があるでしょうし、
その言葉でチームの気持ちをリセットするという約束事
が決められていれば、「ドンマイ!」にも異論は無いはずです。
声がけのバリエーションとしては、
「ナイスチャレンジ!」「スマイル、スマイル!」など。
ジェスチャーも肩を軽く叩きあう、自分の胸叩く、など、
「さぁ、次行こう!」という儀式は色々考えらえます。
先週ご紹介したパーソナルトレーナーのMさんは、
野球のご経験が豊富な方なのですが、
この話をしたところ、内野手の「ミスの儀式」として、
試合中にゴロを取りそこなった後は、
守備位置について大声でボールを呼び込むこと、。
つまり、「もう一本こっちに打ってこい!」と叫ぶことだそうです。
なるほど。
ビジネスの場ではどうでしょう?
ミスしてしまった時、スポーツの試合中の様に瞬時に
気持ちの切り替えが必要な場面は少ないかもしれません。
しかし、交渉の場や、プレゼンテーションで気持ちをリセットする
方法、例えば静かに深呼吸する。メガネを外して拭く。
など、は自分なりに儀式として決めておくことは大切ですね。
「これをやれば気持ちをリセットできる。」という自分への
約束事です。
実は、この「ミスの儀式(ミステイク リチュアル – Mistake Rituals)」は、
Double Goal Coaching(2つのゴールを持つスポーツ指導)
を標榜する、米国のPositive Coaching Allianceが掲げている
ポリシーの一つです。
2つのゴールとは、スポーツの競技としてのゴールと、
人としての成長、人生のゴールのことです。
スポーツ指導者への様々な提言や、選手や父兄との
コミュニケーションのあり方など、自習教材の公開などを通じて
しています。
スポーツ指導の分野での様々な課題への取組み、特に
アマチュアスポーツ、青少年スポーツの領域では、欧米の方が
先を行っている感があります。
来週は、このPositive Coaching Alliance、
について簡単にご紹介しましょう。
今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。