コーチングの肝 「視点を変える」(その4)

改めまして、本年もよろしくお願いいたします。
3年ぶりに行動制限の無いお正月でしたが、
皆様いかがお過ごしでしたでしょうか?

私は2日3日と箱根駅伝のテレビ中継を楽しみました。
「何故この番組人気があるんだろ?」
といつも思っていましたが、聞くところによると、、、

駅伝は個人が基本の陸上競技の中にあって
「団体戦」が展開されるという日本人好みの競技であるのに
加えて、大手町、湘南の海岸線、箱根、富士山などの
晴れやかな風景が正月らしさを醸し出す。

さらに、ひと時も目が離せない競技ではないので、
家族団欒の場でテレビ画面から目を離してお喋り
しながらでも観続けられる、ゆるゆるとした展開が、
お正月の番組として相応しいのだそうです。
なるほど・・・・納得です。

さて、2023年最初のブログは、昨年末からの続き、
「視点を変える」の第4回目。 
締めくくりとなります。

~~ ラベルを区別してみる ~~

人は自分を取巻く不明確な状況を知りたい
という欲求から、その状況や自己の感情、考えに
名前をつけたがります。

この名前をつけることを「ラベリング」といいますが、
人は時々、事実とは異なったラベリングをして
しまうことがあります。

また、状況の変化、自分自身の変化/成長、
とともに、一度付けている「ラベル(名前)」を
張り替えることも必要です。

ラベリングをする際に、人の思考は物事を、
二極化しながらとらえる習性があるので、
類似、あるいは対比する二つの言葉を区別する
ことによって、どちらのラベルの方が有効か?有益か?
を認識しています。

この様に「区別」すると、自分がありたい状況や、
手に入れたいものを、よりはっきりさせることが
可能になります。

クライアントや部下/メンバーが、自分や周囲の
状況への認識が十分に出来ていないと感じた時、
あるいは、その言語化が十分に出来ていないと
感じた時、彼らの区別の思考にスイッチを入れてみる
ことが「視点を変える」引き金になることがあります。

~~ 区別の例 ~~

類似する、あるいは対比する言葉とは、
例えば、以下の様なものです。

「受容」と「正当化」、 「任せる」と「放置」、
「事実」と「解釈」、 「要望」と「命令」、
「共感」と「同情」、 「ビジョン」と「妄想」、
「コントロール」と「支配」、 「チーム」と「グループ」、
「自分本位」と「利己的」、 「マネージャー」と「リーダー」、
「信念」と「頑固」、 「欲求」と「衝動」、
「達成」と「結果」、 「聞く」と「聴く」、、、等々。

これを質問に展開すると、

  • 「チームオペレーションで、任せることと、放置することの違いは何ですか?」
  • 「仲のよいチームを、強いチームに変えるには何が必要ですか?」
  • 「それは事実ですか?それともあなたの解釈ですか?」

などになります。

質問にあたって注意が必要なのは、
コーチングのセオリーに従って、区別もまた
強要するものではないということです。
そして、相手に区別することの意味が理解されている
ことが大切です。

さもないと、相手の感情を傷つける様な
質問になりかねません。
例えば、以下の様にネガティブなメッセージとして
受取られかねないからです。

「それは事実ですか?」⇒ 疑われているの?
「それは放置ですか?」⇒ 無責任と思われている?
などです。
相手の言葉尻を捕まえたツッコミの様にならない
注意が必要です。

質問の実例をご紹介します。

私のクライアントさんで、職場の経験を振り返る会話の中で
ご自身のことを仰る時、「優柔不断」という言葉を
頻繁に使う方がいらっしゃいました。

タイミングを見計らって、
「先ほどからよく出てくる「優柔不断」という言葉は、
「熟慮」とか「慎重」という言葉とどの様に違いますか?」
と尋ねてみました。

しばらく考え込んでおられましたが、
気付かれた事は、スピードの速いチームの中で、
自分の思考や判断が遅いのでは?と心配になり、
他者の意見を安易に受け入れたり、
よく考えないまま賛同したりすることがあったそうです。

即答や即断が必ずしもベストな結果を
生み出さない、ということに視点が変わり
熟慮する習慣のある自分への自己肯定感が
芽生えたと。

そもそもチームの誰も急かす様なプレッシャーは
かけていなかった。自分だけが焦っていたことにも
気付かれた様です。

区別することの効果がコーチング体験でした。

~~ ラベリングの好例、悪例 ~~

私のサポート領域に
アンガーマネジメントがありますが、
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会
では、「叱る」と「怒る」を区別していません。

そもそも、アンガーマネジメントが目指して
いるところは、「怒らない」ことではなく、
「正しく怒ること」です。
感情に振り回されないコミュケーションをとる
ためのトレーニングがアンガーマネジメント
ですので、「叱る」と「怒る」を同意語として
扱っているのは納得できます。
これは、区別しないことの好例です。

一方、世の中には区別が都合よく
利用されることがあります。
「虐待」を、「しつけ」だったと言い訳したり、
「私は会社の『命令』なら従うけど、あなた(上司)の
『要望』には従えません、という屁理屈だったり・・・。
区別の悪例と言えるでしょう。

「区別する」ことの本来の意図は、
人が時々、状況や自らに貼ってしまう
ラベルに対して、類似や対比の言葉を持ち出して、
視点を変えるキッカケにしようということなので、
この様な言葉の意味を歪めた言い訳けや、
言葉遊びの様な会話に用いるものではありません。

~~ 視点を変えるスキルの注意点 ~~

ここまで、4回の長丁場で、「視点を変える」を
テーマにお話をしてまいりました。

コーチの質問によって視点が変わること
(正確に言えば相手が異なる視点を持つことを
お手伝いすること)で、目標へ向けて前進する
ためのエネルギーやモチベーションを向上の効果が
期待できます。

「コーチングの肝」と称したのも、その期待効果故の
ことですが、同時にコーチングの技術を正しく
使う必要がある、という意味もあります。

視点を変えることは強要するものではない
⇒ 相手の許可を得ること。

視点を変える会話を切り出す見極め
⇒ 相手の観察が必要。

そして、大切なことはコーチ側の準備です。
コーチング側が持っている視点にも、限界や
傾向がありますので、即興で質問を考えて
準備の無いセッションが進んでしまうと、
流れ任せの枠の中での対話となってしまい、
コーチ、クライアント双方の視点以上のものは
生まれません。

ですから、コーチ側は準備をすることで意識的に
視野を広げ様々な選択肢を持っておくことが
必要です。

さらに、前号でも述べましたが、
職場での上司と部下の関係においては、
コーチングが有効に働くケースと、そうでない
ケースが生まれてきますので、
「コーチングありき」ではなく、目的に沿った
コミュニケーションの遂行と、普段からの
良質な関係性の構築が不可欠となります。

繰り返しになりますが、「視点」はその人の
信条、考え方、経験、なども影響して
作られていますので、
「新たな視点を持とう!」
「視点を変えよう!」と言っても、そう簡単では
ありません。
そして最終的な目的は、行動を変えてもらう
ことですから、コーチ側の準備と丁寧な
対話とフォローアップが不可欠になることを
強調して「視点を変える」の結びといたします。

今日のお話はここまでです。
最後までお読み頂きありがとうございます。

既に仕事のスタートを切っている方々も多いと思います。
今年も元気にいきましょう!

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門

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