出井伸之氏の逝去に思うこと
6月7日のニュースで、
ソニー(現ソニーグループ)の元会長兼CEOの
出井伸之氏の訃報が伝えられましたね。(ご逝去は6月2日)
私にとっては全くの雲上人ですが、出井氏逝去のニュースから、
ビジネスを継続していく中で「後継者」の意味について
ちょっと考えてみました。
~~ 「後継者」という考え方 ~~
井出氏は、創業者、盛田昭夫氏の世代からも遠く、
しかも製造業の雄たるソニーにおいて理系の出身でもなく、
どちらかと言えば末席に近い役員ポジションから、
14人を飛び越えて一躍社長に就任しました。
「Digital Dream Kids」を掲げ、ソニーという会社の進む道を、
製造業から、デジタル、IT、ネットワーク、サービスへと、
大胆に舵をきっていった人です。
「技術屋でなくてもいいから、技術がわかる人。
つまり技術と製品に精通している人。」
「ソフト(今でいうコンテンツも含めて)がわかる人」
「10年先がわかる人」
という、条件で候補を消去していったら出井氏が残った、
というのが、前任の大賀典雄氏の談話だったそうです。
なるほど。
歴史に名を遺す技術や製品で
「世界のソニー」の立場を築いた会社が
製造業、ハードだけでは生き残れない、との決断だったのですね。
井出氏の就任後に打ち出された方針が、
すべて歓迎され、成功したわけではなく、
「企画倒れ」の批判を受けたものもあり、
「出井氏経営の功罪」という角度で取り上げられた例も
少なくありません。
どの経営者だって、打つ手打つ手がすべてあたり、
順風満帆の大成功、ってことはあり得ないのですから、
うまくいかなかったことを取り上げて衆目を集めるのは、
マスコミのひとつの営業手段ぐらいに思っていますが。
ここで、「理想の後継者ってどんな人?」について考えてみました。
みなさんは、「後継者」という言葉から何をイメージしますか?
言葉の遊びになるかもしれませんが、
私が考える「後継者」とは、
何か、前任者の想いや情熱や、組織文化や、価値観、信条の様なものを
無形なものとして引き継いでいる気がします。
そして「意識的」であれ「無意識」であれ、
組織DNAというか、「~らしさ」への敬意が常にあるような。
そういった私の勝手な持論に照らしてみると、ソニーは
大きな改革をリードできる人を抜擢しつつも、
「技術がわかる」という観点から、
「後継者」を選択したのだろうと思うのです。
~~ 次世代リーダーとは ~~
一方、「次世代リーダー」という言葉も使われます。
「次世代リーダー」については何をイメージしますか?
例えば、イノベーションの旗手。
スクラップ・アンド・ビルドの発想で、イノベーションをリードする人。
組織改革、人を変える、マネジメントを変える、
ブランドを変える、ブランドを創出する、新しい価値を創造する、
市場を創造する、事業の統廃合、必要ならM&Aも・・・、と。
実際にはそんなアグレッシブなことばかりやっても
社員もお客さんも投資家もついてこないので、
上記は極端な例ですが、イメージとして持ち得ているものでしょう。
そもそも「次世代」とは一体何を指しているのか?
と突っ込みたくもなるのですが、
おそらく「現状ではないもの」「今と違った状態」でしょう。
ですから、
様々なものが変化する環境の中で、会社、チームを成功へ向けて
導いていくのが「次世代リーダー」に期待されることだと思います。
従って、会社の管理職研修のタイトルに「次世代リーダー育成コース」
という様なタイトルが掲げられることが少なくありません。
研修コンテンツも
「我々は変わる必要がある」
「だから違った発想が必要である」
「だから違ったやり方を考えよう」
「パラダイムシフトに対応しよう」
等々・・・・と、
現状から脱却し、新しい世界を新しい目で見て、
進んで行くことが奨励されます。
これは間違いではないと思います。
次世代リーダー育成研修のコンテンツには
刺激を受ける、有効なものが豊富に含まれています。
しかし、ここに「後継者育成」の発想も必要ではないでしょうか?
かつて私のコーチングセッションで
「後継者育成」がテーマになったことがあります。
私がコーチングセッションでクライアントの方に質問した、
「後継者育成が「成功した」ということは、何でわかりますか?」
に対しての回答は、いみじくも
事業拡大でも、売上向上でもありませんでした。
「社員やメンバーの幸福度やモチベーションが下がらずにいること」でした。
もちろん、会社が右肩下がりになったら、社員は幸福にならないので、
売上や事業拡大は大切だけど、それは信じた後継者が
立派に成してくれるだろう。という考えによるものでした。
質問を続けることで、
「あなたは何を大切にしてビジネスをしてきたか?」
「それが、何故?あなたにとって大切なのか?」
というお話も伺えました。
「次世代リーダーの育成について」が
コーチングセッションのテーマであったら、
また別の会話が楽しめたのではないかと思います。
~~ 守破離(しゅはり)の大切さ ~~
では、
「後継者育成」という考えで組織DNA、文化、情熱、信条などを継承させようと
する発想では変化への対応ができないのでは?
「後継者」という発想は
「イノベーション」へのアンチテーゼになるのではないか?
という意見も聞こえてきそうですが、
私は、
「相手は技術やビジネスモデルやオペレーションではなく、
「人」なんだから、・・・・ もう少し穏やかに考えてもよいのかな」
と、思います。
なんでもかんでも変化に対応するのだ。ではなく、
敢えて変化させないもの、に意識を向けることも大切です。
実際、コーチングセッションで、
後継者育成(次世代リーダー育成とも呼ばれることも多いですが)が
テーマになるとき、そんな思いを強くします。
変化させないものを大切に、と言いながら結局人は成長します。
気づき、学び、自分を変化させていく力を持っていると思います。
ましてや、後継者候補となる様な人であれば。
日本古来から剣道、茶道などの修業に伝わる、
守・破・離ですね。
守 = 師の教え、型、技を忠実に守り、
基礎、基本を確実に身につける段階。
破 = 他の流派や師の教えにも眼を向け、
良いものは取り入れて自分の技を発展させる段階。
離 = 教えを受けた師や流派、型から離れ、
自分の新しいスタイルを確立する段階。
ソニー出井氏は、モノ作りソニーの基本は骨の髄まで分かっていて、
その上で、「破」と「離」の段階に会社を導ける人と評価されたのだと思います。
今日のお話はここまでです。
最後までお読み頂きありがとうございます。