リーダーシップとヘッドシップ

今日のテーマは少々トリビア(雑学や豆知識、些末なこと)的になります。
「だからどうした」という類の話になりますが、知っておいて損にはならないかと・・・
「ヘッドシップ」という、あまり馴染みのない言葉のお話です。

~~ リーダーシップに並んで組織に必要な〇〇シップ ~~

リーダーシップはお馴染みの言葉ですが、「ヘッドシップ」という言葉と聞いたことがありますか?

リーダーシップとヘッドシップは、組織や集団における指導的な言動や役割を表す言葉ですが、それぞれ異なるニュアンスや意味を持っています。

リーダーシップとは、ご承知の方も多いと思いますが、他者に影響を与え導く能力や、プロセスを指します。リーダーは、チームや組織の目標達成に向けて、人々を鼓舞し、方向性を示し、サポートを提供する役割を果たします。

重要なことは、リーダーシップは必ずしも役職や職位が伴うものではなく、あらゆる組織階層、職位の中で発揮されることがあるということです。

一方、ヘッドシップ(Headship)は、より伝統的で権威的なリーダーシップの形です。特定の組織や集団の「頭」や「トップ」に立つ人物を意味し、指導者が持つ権限や責任が焦点になります

ヘッドシップによって指示が出され、決定が下され、組織が管理されます。

しかし、これは主に階層的な組織において、上位者が下位者を権威を行使して動かすという、極く普通に見られる上意下達の姿とも言えます。

故に、ヘッドシップが必要だと思えばそれを発揮するのに迷いや障害はないはずです。組織のトップに立つ責任者が号令を発ればよいのですから。

試しに、Amazonで「リーダーシップ」あるいは「Leadership」で本の検索をしてみてください。和書、洋書で数万件がヒットします。それが「ヘッドシップ」あるいは「Headship」だと、僅か数件です。

私見ですが、この結果から、ヘッドシップはその育成方法、活用事例、伝播の方法、効用の是非などを、著書を以て論じるほど、複雑で多義性を持つものではないのかな、と想像しました。また宗教的な視点や、家族などの文脈で使われることが多く、ビジネスで引用されるケースは少ないのかもしれません。

そして、「ヘッドシップ」は権限や責任をもって組織を率いる力として、リーダーシップの一側面ですので、敢えてこの言葉を取り上げる価値は低いのかな、という思いもあります。

その様な「ヘッドシップ」を敢えて取り上げたのは、先日、「リーダーシップ」という言葉が乱用されているかな?と思う場面に遭遇したからです。

営業の上司が部下の一人から、サポートのトラブルに起因する顧客からのクレーム報告を受けています。
この上司は「リーダーシップ」という言葉が大好きで、常にそれを発揮することをチームに求めています。それはマネジメントとしては正しいし、実際にリーダーシップが発揮されているケースも散見されます。だから疑いなく「リーダーシップ!」を連呼します。

報告を受けて具体的対応を決めた後、上司の常套句「では君のリーダーシップで迅速に対応してくれ!明日また報告をくれ。期待してるよ!」
部下は「わかりました!やってみます!」・・・・ 大丈夫なのかなぁ。

職位が上の人にとって、「リーダーシップ」とは部下の背中を押すのに都合の良い言葉だと思います。

「そこは君のリーダーシップで皆をまとめて欲しい」
「リーダーシップを発揮して進めてくれ」
「君のリーダーシップに期待しているよ」

とかとか・・・・

こうした言葉で部下のモチベーションが上がり、多少背伸びしてでもリーダーシップを発揮することで自己の成長に繋がれば、それはそれで良いことですが、本来なら直属の上司や、さらに職位が上の人にイニシャティヴ(率先、自発力、主導)によって為されて然るべきこともあるはずです。

それがヘッドシップと言えます。

上述の例で上司が「難しいと思っても先ず部下にやらせてみる。そこで彼、彼女らが課題にぶつかってからが自分の出番だ。」という、教育的な目的があれば話は別だと思いますが、上司が責任や面倒なことはなるべく背負いたくない、という思いが頭をもたげていたら、リーダーシップは危険な言葉です。

なんでもかんでも「現場のリーダーシップ」で解決できるはずありませんよね。
上司が職位として持っている、権限、リソース(人や予算)、権威(他部門との交渉など、一種のスキルとも言えますね)の支援を仰ぐとこともリーダーシップです。

「この領域は部長のヘッドシップを発揮して頂いて・・・」と。
ヘッドシップなどと聞き慣れない言葉を使われると面食らいますので「権限」と言うところでしょう。

上司は何から何まで細かい指示や行動は出来ないので(すべきでないので)、それをリーダーがチームをまとめて然るべき目標にリードする。そのリーダーシップが存分に発揮される様に上司は自らの権限、リソースをもって支援する。それが理想の姿だと考えます。

また、リーダー多くの権限(パワー)を持っている場合は、それを正しく、正しいタイミングで発動すれば、ヘッドシップがリーダーシップの中で上手く使われたということになるでしょう。

「現場は君のリーダーシップで・・」と命ずる前に、「自分は上司としてコレコレをやるから」と言っておく。また、「対応が難しと思うところがあれば遠慮なく言ってくれ」と伝えておく。
これがリーダーシップを発揮させる上司側の心構えだと思います。

~~ ヘッドシップがリーダーシップより有効なケース ~~

ヘッドシップはリーダーシップの一側面ですが、
権限に基づく指示、公式な役職に伴う権限や責任の行使、決定されたことへ従うように指示する、
という特徴があります。

これは、ビジョンを共有したり、人の感情に働きかけたり、人を導く際の影響力に配慮したりする、リーダーシップの特徴とは異なっています。
両社の優劣や良し悪しを比較することに意味はありませんが、以下の様な状況において、ヘッドシップがリーダーシップより効果的に機能すると考えられています。

  • 緊急時や危機管理が求められる状況
    緊急事態では、迅速な意思決定と明確な指示が不可欠です。たとえば、災害時や安全上の緊急事態では、限られた時間で上位者が即座に指示を出し、組織全体を迅速に動かす必要があります。
  • 新規事業の立ち上げやスタートアップ
    新規事業やスタートアップの初期段階では、ビジネスモデルの検証や戦略の迅速な展開が不可欠です。この段階においては、明確なビジョンと方向性を持つリーダーが中心となり、迅速に意思決定を行い、チームをまとめることが求められます。組織が成長し成熟するにつれて、より民主的なリーダーシップが重要になりますが、初期段階ではヘッドシップが有効と言われています。
  • 法令遵守が重要となるケース
    業務が法令遵守を必要とする場合、明確な指揮と管理が求められます。例えば、医療、製薬業界、運輸業界では、規制に従ったプロトコルに従うことが不可欠であり、ヘッドシップが組織を確実に法令順守へと導くのに役立ちます。
  • 指導者の権威が価値観や文化によって尊重されているケース
    伝統的な家族経営や長い歴史を持つ組織では、指導者のヘッドシップが組織の安定を生み出すことがあると言われています。指導者の権威が強く尊重される環境では、ヘッドシップが自然にかつ効果的に機能し、メンバーが指導者の指示に従いやすくなり、組織やチームの目標達成に役立ちます。
    頑固親父のワンマン経営だが、会社は成長し、従業員の定着率も高いというケースですね。
    ただし、長期的にはリーダーシップとのバランスを取ることが、組織の健康と成長にとって重要だとは思います。

また、組織形態として「命令への服従」を基本とすることで組織がその機能を果たすという、軍隊や警察などの階層的な組織もヘッドシップが重要となります。
明確な階層構造と厳格な指揮系統が求められる組織では、ヘッドシップによって従うべき命令が明確に定められており、上下関係に基づいた指示が効率的に遂行されることが常に求められるからでしょう。

リーダーシップの一側面としてヘッドシップのお話をしましたが、どちらかが大きく欠けていたり、過度に依存していると、長期的視点ではチーム運営はうまくいかないと考えます。
何ごともバランスですね。

今日のお話はここまでです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門

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