スポーツ指導における「傾聴」を考える(1)

一気に蒸し暑くなってきましたね。
気候変動の影響で、もはや日本は亜熱帯。
ゲリラ豪雨も珍しいものでは無くなりました。

亜熱帯の住民としては、クールビズの考えも
「昔のビリーフ(信条)」としてリセットし、アロハシャツ、短パンも
正装と認め、状況に応じてこの姿でビジネスに
臨むことが生産性向上に繋がるのではないかと思うのです。

日本でも、外資系IT企業では、Tシャツ、短パン、
ビーチサンダルでプログラム開発しているエンジニアなど
珍しくありません。 その姿で問題ない職場では、
日本企業ももう少し緩くてもいいかな、といつも
思っています。

さて、スポーツ指導に使えるコーチング技術について
お話してまいりましたが、「質問」「承認」に続いて、
今日から「傾聴」がテーマです。

傾聴、承認、質問、がコーチングセッションにおける
3大要素であることをご紹介して、スポーツ指導に
おける活用をお話してまいりましたが、
「傾聴」を最後にもってきたのには理由があります。

「傾聴」というコミュケーション技術を効果的に
用いるためには、「承認」や「質問」を適宜取り入れながら
進めていく必要があるからです。

では早速、コーチング技術の3つ目、「傾聴」のお話です。

~~ 傾聴(アクティブリスニング)とは ~~

「傾聴」は、今では 1 on 1 ミーティングや
コーチングセッションにおける不可欠なものとして
紹介されている用語ですが、
元々は米国の臨床心理学者、
故・カール・ロジャーズ(Carl R. Rogers)が、
1960年代に創り出した
「来談者中心療法(Client-Centered Therapy)」が
「傾聴」と翻訳されて広まったと言われています。

治療法ですから、コーチングで紹介している様な
コミュニケーション「技術」とは一線を画するものだと
思いますし、実際カール・ロジャーズの行っている
「傾聴」では数時間、黙って相手の話をひたすら
聴くというケースもあったと言われています。

その様な医療行為ではなく、
これからお話するコーチングに使われている「傾聴」は、
コミュニケーション「技術」ですから、
練習や反復によって身につけることができるものです。

コーチングにおける「傾聴」の目的は、
話し手にとっては、

  • 自己効力感を高めること
  • 自分の考えを自ら知る機会になる

こと、
聞き手にとっては、

  • 相手との信頼関係を築く
  • 相手の状況を把握する
  • 相手の行動を促す

ことにあります。

自己効力感とは、外側で起きている事象に対して、
自分が影響を及ぼすことが可能であるという
感覚のことを指します。
「人から話を聞いてもらえない」という感覚を持つと、
「自分の言っていることが重要と思われていない」
「自分はあまり大切な存在ではないようだ」
「自分はここにいていいのだろうか?」
と、孤立感、無力感に襲われ、
この自己効力感が下がってしまいます。

一方、話を聞いてもらうことによって、
「自分の存在が受け入れられている」
という感覚が生まれます。

また自分の考えを口に出すことによって
自分の内側にあったアイデアや思っていたことを
知る、ということは人の脳の特性です。

こうした話し手にとっての効果を
「傾聴」によって引き出すわけです。

~~ 傾聴が不可欠となる1on1ミーティング ~~

チームのパフォーマンスを上げる一手段として
1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングが
注目されてから久しいですが、
1on1ミーティングを上手く進める技術の
ひとつとして「傾聴」は欠かせないものと
して紹介されています。

そこで、コミュニケーション技術としての「傾聴」の
前に、1on1ミーティングについて少しお話を
したいと思います。

会社や組織で行われる1on1ミーティングは、
上司と部下、リーダーとチームメンバーなど、
階層や役割が異なる2人の対話によって
進められますが、その対話の前提として、
報告、連絡、相談、いわゆる「ホウ・レン・ソウ」や
指示、命令といった仕事を回すための
コミュニケーションが普段から行われています。

仕事は日々の活動の中心ですし、その時間を
共にしている上司やリーダーとは自ずと、課題、
方針、考え方などが共有されていることが多いので、
会話するテーマが決めやすく、また理解も早いと思います。

そういう意味で、スポーツ指導における
1on1ミーティングは、会社組織におけるそれとは、
若干進め方や目的が違ってくるかもしれません。

~~ スポーツ指導者の1on1ミーティング例 ~~

とはいえ、スポーツ指導の世界においても、
指導者と選手の間の信頼感を高める。
選手の主体性、情熱、アイデアを引き出す。
等、1on1ミーティングの効果は証明されています。

以下、私のクライアントの方が実践している、
あるいは、研修の参加者から伺った、
スポーツ指導における1on1ミーティングの状況です。

《対象》
スポーツ指導者の活動場は様々です。
地域のスポーツ少年団、クラブチーム、
小中学校の部活動、高校の運動部、
大学生スポーツ、社会人、さらに、
ナショナルチームも。

大人であれば、ミーティングというものの
意味やそれが1対1の対話で行われる
目的も理解できると思いますが、
生徒、児童にとっては、大人との1対1の
会話は、先ず怖い印象を持つのが自然です。

1on1ミーティングを受入れ、効果も期待できる
のは、例外もありますが、中学3年生くらいから
高校生以上が適当と考られている様です。

チーム内でも、1on1ミーティングの目的に
応じて、チーム全員と行うとか、
キャプテンのみ(中学生のケース)とか、
3年生のみ、4年生のみ(高校生のケース)、
など対象を適宜決めて実施している様です。

《場所、方法》
会社と異なり会議室が用意されているわけでは
ありませんので、場所は限られてくると思います。
リアルで行う場合は、高校生の部活指導の例ですが、
以下の様なやり方がありました。

  • 運動場や体育館の一角で他の生徒にも見える所で
  • 話し声は他の生徒には聞こえないくらいの距離をとって、
  • 椅子を2脚用意して、練習の最中に選手を呼んで
    20分程度の会話
  • 真正面からの向き合って座らず、やや斜めに構えて
    一緒に練習を見る感じの姿勢で話を進める。

という形です。
お仕置きの様な雰囲気にならないことを狙っています。

コロナ禍の間はリモートにせざるを得ない状況でしたね。
大学生の体育会を指導するある方は、LINEを使ってマメに
1on1ミーティングをしていらっしゃいました。

特に試合後(これもコロナ禍で激減していましたが)は、
記憶が新しいうちに「振り返り」を目的として行っていたようです。

《タイミング》
チームが新体制となった時。
オリエンテーション中。
合宿の最中。(会議室など部屋のある環境でも
食堂やロビーなど開放的なスペースを利用)
試合の数日前、あるいは試合終了後。

《テーマ》
何でもオープンに話せる場であり、それ故に
「傾聴」が効果を発揮する機会なのですが、
いきなり、「何でも好きなことを話して」と
言われても、特に中高生は当惑します。

そこで、「質問」を呼び水にして、話を引き出す
わけです。 聞き手の確認が目的になりがちな、
「クローズドクエスチョン」ではなく、話し手が多く
発話機会をもつ「オープンクエスチョン」が必要です。

  • 今、課題に思っていることは?
  • どうしたら目的に近づける?
  • このチームをどんなチームにしたい?
  • この前の試合、上手くいった理由はなんだろう?
  • 自分の強みをもっと伸ばすには何が必要?
  • どんな助けがあるともっと成長できる?

等々です。

以上、様々なやり方がありますが、
共通していることは、
on1ミーティングというものを
チームで行っていくことを、その目的と共に
全員に伝えていることです。

先ずは、
「一人一人の意見やアイデアをオープンに
話す機会を設ける」
という分かり易い説明でよいでしょう。

それによって、指導者と選手、生徒が1対1で
話し合っている姿も、他者からは
「あぁ、例の1on1ミーティングやっているんだな」と、
自然に映りますし、1on1ミーティングへの
関心も高まるはずです。

以上、「傾聴」が活躍する場として
先ず、1on1ミーティングについてお話をしました。
次回はこの続きで、「傾聴」の技術について
ご紹介してまいります。

今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役   1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。   営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。    2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。   2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。 著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/    Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得    「実践経営・リーダーシップ」部門、「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門